第二部 1978年
ソ連の長い手
ソ連の落日 その2
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クは一礼すると2本抜き取り、火を点ける
ユルゲンに向かっても進めたが、左掌を見せ断った
「戦場帰りってのにタバコはやらんのか。珍しいな」
ふと同輩が漏らす
「これで酒をやらねば、いい男なんですけどね」
男は、彼の碧海のような瞳を覗き込む
「高いウィスキーを持ち込んで飲むのは気を着けろ。何処でだれが見てるか分からん」
そう言い放つと、苦笑する
アベールに留学記念に貰ったスコッチ・ウイスキーを、勤務中に4人組で飲んだ件
大分前の話とは言え、知れ渡っていたとは……
身の凍る思いがした
「美人の女房にちょっかいを出すと言われれば、腹が立つのは分かる。
だが、君も15、6の少年志願兵ではあるまい。仮にも戦術機実験集団を預かる隊長」
灰皿にタバコを押し付けて、もみ消す
「その辺の分別が出来ぬ様では、高級将校には上がれない。
岳父の期待に沿う人間になり給えとは言わんが、もう少しは士官学校卒らしく振舞い給え」
男は立ち上がると、椅子に腰かけた彼等に向かって言い放つ
「風呂に入って着替えた後、少し休んでから帰れ。
軍団司令部には、俺から話を着けて置く。
何時までもそんなボロボロの強化装備姿で居られては困るからな。
通信員の目の毒だ」
確かに、この男の言う通りであった
師団本部に連れてこられた時、婦人兵がユルゲンたちを一瞥すると頬を赤らめていた
その事には、彼等も気が付いてはいたのだが、敢て知らぬ振りで通すつもりであった
そう言って、男は部屋を後にした
軽くシャワーを浴びた後、師団長室で昼過ぎまで仮眠した二人
真新しい下着と野戦服に着替えた彼等は、遅めの昼食を取っていた
久しぶりに温かい食事を楽しんでいた時、ドアが開く
食事する手を止め、立ち上がり敬礼をする
ドアを開けて入ってきたのは、野戦服姿のハンニバル大尉であった
「30分後に出発だ」
「同志大尉、今回の通信遮断の件は……」
挙手の礼をしていた右腕を下げる
「まだ未確認ではあるが、多量のガンマ線が検出された。
参謀本部では高高度で実施される核爆発、詰り電磁パルス攻撃の可能性が示唆されている」
ハンニバル大尉は紙巻きたばこを懐中より取り出しながら、告げる
白地に赤い円が書かれた特徴的なパッケージ……、『ラッキーストライク』
両切りタバコを口に咥えた後、ヤウクに差し出す
「それじゃ、部分的核実験禁止条約を一方的に破棄したと……」
ライターで火を点けると、紫煙を燻らせながら、大尉は彼の瞳を見た
「ソ連政権からの通告も、政府発表も無い。
「プラウダ」「イズベスチヤ」両紙にも全く関連記事が無い」
脇に居るヤウクは、相変わらず黙ったままだ
「と言う事は、現場の暴走ですか」
大尉の碧眼が鋭くなる
「
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