第66話 用意周到 本末転倒
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超えそうですが」
サンテソン少佐の提言通り、今もって撃沈した艦艇は八〇隻を超えた。第三五一独立機動部隊の損害は六五隻。現時点では一六四対五一二。三時間にわたって戦線崩壊は防げているが、これだけ戦力差が出れば、もうモリエート准将は遠慮しないだろう。その予想通り、台形陣はゆっくりと左右に広がり始めた。
「救出部隊の状況はどうだ?」
予定通りに行けば、もう地上から離脱してくれているはずだ。そして事前に話していたことをフィンク中佐が覚えていれば、とりうる戦法が変わる。
「現在位置不明。一時間前に離脱信号は受信しています」
「そうか」
部下を信じる。少なくともイェレ=フィンク中佐は俺の部下ではないが、中佐はここまで爺様やエル=ファシル奪回作戦においてその期待を裏切ったことはない。今までの軍事経歴で、俺にはドールトン准尉のような臨時配置か、バグダッシュ大尉のような同階級の先任が殆どで、はっきりと直属の部下と言い切れる人間はいなかった。だが今、地上から帝国兵を満載して離脱を試みているのは、第八七〇九哨戒隊の面々だ。エル=ファシルの英雄の光に押し込まれた深い影に押し込まれた、罪なき罪人。
「信じよう」
俺は決断した。
「両翼後退。そのまま中央部隊の後方に入り、陣形を細円錐陣形へ。戦艦戦隊、円錐最前列へ」
俺の命令に、サンテソン少佐とオペレーター達が次々と指示を出す。シミュレーターに映る第三五一独立機動部隊の陣形が、明白に半包囲体制へと移行していく。こちらは後退、相手は前進。
「主砲短距離砲切り替え。全艦機関最大戦速。敵中央部へ向けて突撃せよ!」
戦局は一気に変わる。それまでの攻勢と防御の立場が反転し、第三五一独立機動部隊の両翼は慌ててこちらの後背に回り込もうとし、中央部隊は防御を固め始める。苛烈な砲撃が浴びせかかってくるが、こちらの突進を回避するために砲撃せず進路を開ける艦もある。
ほんのわずかな瞬間、第三五一独立機動部隊の旗艦である戦艦アローランドの姿が左舷に見えたような気がしたが、それは気のせいだろう。緊急加速中の艦から外部を見たところで、人間の動体視力では到底とらえることなどできようはずもない。
「中央突破成功。やりますな、『提督』」
「この艦は撃たれないと分かってますからね。大胆にもなりますよ……と言っても逃げだせたのは、一二〇隻程度ですか」
俺はディスプレイの上に映る数字に舌打ちする。数的不利を戦術で覆すのは、やはり天才でしか為せないことなのか。それとも為せるからこそ天才と呼ばれるんだろうか。大きく溜息をつくと、俺は指揮官席に腰を下ろした。本革の柔らかさが体にしみわたっていく。
「第三五一独立機動部隊は反転追撃してきません」
「戦艦アローランドから当艦に向けて光パルス通信です。『危
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