第一章
[2]次話
氷水
この時大阪は異常な暑さの中にあった。
「今日暑いな」
「今年一番の暑さらしいな」
「そうらしいな」
「四十度いってるさかいな」
「ほんま暑いわ」
「アスファルトで目玉焼き焼けるわ」
「お好み焼きもいけるわ」
こうした話をしていた、大阪市内はうだる様な状況だった。
しかもこんな時にだった、八条バスの此花駅の待機所ではクーラーが壊れてしまった。それで窓を全開にして扇風機もかけていたが。
「四十度さやかいな」
「窓開けても暑いわ」
「扇風機かけててもな」
「それでも暑いわ」
「こんな時にクーラー潰れるなんてな」
「ほんま難儀な話や」
待機している運転手達は汗だくになりながらぼやいていた。
その中にいる色黒の痩せた一七一位の背のスポーツ刈りの小さな目の男花田隆俊は特にこう言っていた。年齢は四十代で家には妻と娘が二人いる。
「悪い時には悪いことが重なるって言うけどな」
「今日がそれやな」
「暑い時にクーラーが壊れる」
「ほんまそれやな」
「もうここなんかうだる位や」
「日差しも強いし」
同僚達も口々にぼやいた。
「どうにもならんわ」
「今日はほんま厄日や」
「暑さにやられる日や」
「どうにもならんわ」
「今日はバスに乗ってる時が一番や」
花田はこうも言った。
「ここにおらんでな」
「ほんまそやな」
「ここ数日猛暑でな」
「今日は特にそうや」
「そんな時やさかいな」
「もうクーラーが壊れたならな」
それならというのだ。
「バスの中が一番や」
「仕事してる時がな」
「もう何といってもな」
「その時が一番や」
「仕事してる時が一番とかな」
花田は団扇で自分自身を仰ぎつつ言った、それでもまだ暑かった。
「難儀な日やで」
「クーラーの修理屋さん明日の朝来てくれるし」
「今日だけの辛抱や」
「しかしその今日が今年一番の暑さや」
「ほんま災難やな」
「そう言うしかないわ、こんな日は仕事が終わったら」
今日は朝から入っているので夕方で終わりだ、花田は自分のそのスケジュールのことからさらに言った。
「もうかき氷やな」
「ああ、自分酒飲まんからな」
「ビールとか飲まへんさかいな」
「甘いもん好きやしな」
「それでやな」
「アイスもいいけれどな」
それでもとだ、花田は同僚達に話した。
「今日はな」
「かき氷やな」
「それ食うな」
「そんな気持ちやな」
「もうあれを一気に食うてや」
そうしてというのだ。
「ひんやりしたいわ」
「ほんまそやな」
「こんな日は冷たいもんや」
「身体冷やすとあかんって言うけど」
「それでもな」
「それが一番や」
こう言ってだった。
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