第三章
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かつての古い知り合いに金が必要だと言ってだ、申し出た。
「出来るだけルートの高いな」
「それでか」
「裏でもいい、兎に角すぐにだ」
「金が欲しいか」
「紹介してくれ」
「わかった、しかし何があったんだ」
知り合いは死ぬ様な顔の彼に問うた。
「そんな顔で久し振りに来ていきなりそう言うなんてな」
「理由は聞かないでくれ」
これが滝本の返事だった。
「それでだ」
「紹介してだな」
「ああ、打たせてくれ」
「すぐに高いとなると今は裏でな」
「そうした世界で打つか」
「それでもいいか」
「構わない」
滝本はもう迷っていなかった、そして。
暫くして医師のところに来てだった。
大金を出して問うた。
「これで十分ですか」
「はい、ですがこのお金は」
「人殺しとか覚醒剤とかじゃないです」
このことは誓って言えた。
「それで今は捕まらないことです」
「そうですか、では」
「これで足りないなら」
「いえ、充分です」
医師はその大金を見て答えた。
「ではすぐに」
「妹を手術してくれますか」
「後はその人がやってくれます、確かに法外な報酬を要求しますが」
それでもというのだ。
「必ず成功してくれる人なので」
「だからですね」
「もう安心して下さい」
こう言ってだった。
金を受け取った、その後で。
琴の手術がはじまり彼女は助かった、その後でだった。
手術が終わってもまだ入院している彼女は毎日仕事帰りや時間のある時に見舞いに来ている兄に笑顔で言った。
「もう大丈夫だから」
「そうか、もうすぐでか」
「退院だから」
「よかったな」
兄は妹の言葉に素直に笑顔になった。
「助かって」
「ええ、ただ手術代高かったのよね」
ここで琴は兄にこのことを尋ねた、ベッドの中から半身を起こして。
「そうよね、貯金大丈夫だったの?」
「安心しろ、お前の将来の学費も結婚の時の金もな」
兄は笑顔で話した。
「あるからな」
「そうしてくれたの」
「だから安心しろ」
金のことはというのだ。
「お前は気にするな」
「あの、それはいいけれど」
琴は笑顔で語る兄にだった。
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