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農夫の力
第二章
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 微かに浮くだけだった、それで兵達も驚いた。
「スウャトゴル様でもか」
「かろうじて浮くだけか」
「牛や馬をどれだけ使ってもびくともしないし」
「これだけか」
「この袋は何が入っているのだ」
 さしものスウャトゴルも驚きを隠せない顔で言った。
「一体」
「はい、それはです」
 ここで農夫が答えた、顔だけでなく喋り方も素朴なものである。
「大地です」
「大地だと」
「はい、大地の重みがです」
 それがというのだ。
「そのまま入っています、おらに神様が授けて下さったものです」
「神様がか」
「はい、おらはミクーラといいますが」
 農夫はここで自分の名を名乗った。
「この近くの村で農夫をしていますが」
「兵ではないのか」
「はい」
 そうだというのだ。
「おらはです」
「農夫なのか」
「ですがおらが力持ちということで」
 それでというのだ。
「だからです」
「神がそなたにか」
「大地の重さを授けて下さって」 
 そうしてというのだ。
「それを持って大地を持てるだけの力を授けて下さって」
「その力を何に使うのか」
「仕事にです」
「農夫のか」
「はい、それにです」
 まさにというのだ。
「力を使っています」
「畑仕事にか」
「お陰でうんと働けています」
 ミクーラはスウャトゴルに笑顔で答えた、笑顔も素朴なものである。
「おらは。畑を耕すのも石をどけるのも楽で」
「そうなのか」
「木を引っこ抜いてそこから木を軽く細工して橋を造ったり堤や人の家を造るのも」
 そうしたこともというのだ。
「楽にです」
「出来ているか」
「はい」
 そうだというのだ。
「百姓仕事だけでなく村のそうした仕事も」
「そうなのか、しかしだ」
 スウャトゴルはミクーラの話をここまで聞いて言った。
「そこまでの力があるならな」
「それならですか」
「兵になってだ」
 そうしてというのだ。
「ロシアの為に戦ってみないか」
「おらがですか」
「そうしてくれるか」
 こうミクーラに言うのだった。
「ここは」
「おらが」
「わしなぞ比較にならない、大地さえ持ち上げられる力を持っているのだ」
 それ故にというのだ。
「それならだ」
「そうですか」
「どうだろうか、いや」
 ここでだ、スウャトゴルは。
 考えを変えた、そのうえでミクーラにあらためて話した。
「そなたはそのままの方がいいか」
「この村にいてですか」
「百姓仕事をした方がな」
 その方がというのだ。
「いいな」
「何故そう言われますか?」
「兵は国を守るのが仕事だ」
 自分のその仕事のことも話した。
「その仕事を果たすのに私の力があればだ」
「充分ですか」
「事実そうだしな、だが百姓の仕事はこの
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