第二章
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「あの身体をつくることばかりでな」
「稽古はしておらぬか」
「あれは見せるだけの筋肉でな」
それのみでというのだ。
「実際は何の役にも立たぬ」
「そうした身体か」
「だからこそだ」
その為にというのだ。
「弱いものをいたぶってだ」
「自分は強いと言っておるか」
「まことの武芸者ならな」
それならばというのだ。
「あ奴から逃げるわ」
「意気地なしであるか」
「所詮な、だがあ奴は先生を何かと悪く言う」
「では我等がだな」
「どうにかせねばならぬが」
「なら成敗するまで」
鼻っ柱の強い高杉は右手を拳にして振りつつ言った。
「我等でな」
「その価値もない男だ」
だが桂はその高杉を止めてこう彼に告げた。
「止めておけ」
「先生を愚弄しておるのにか」
「それはわしも腹が立つがな」
それでもというのだ。
「所詮は小者、だからお主が出るまでもない」
「ではどうする」
「さて、どうしたものか」
「それが困るな」
久坂も言う、三人だけでなく塾の者達は松陰がその物腰故に軽く見られることがあり特に清原がそうしていることに憤りを感じていた。
だが具体的にどうするかは考えている時にだった。
その清原が来た、背は高く身体つきはしっかりしている。
面長の顔で丸く嫌な光を放つ目を持っている、頬から顎にかけて髭を生やしその着物は江戸のごろつきを思わせる。
その彼が塾に来てだ、塾生者達は何かと思った。
「あ奴自ら来た」
「何のつもりだ」
「しかし何という身なりだ」
「あれが武士それも二百石取りの家の者の身なりか」
「あれではごろつきだ」
「ならず者と変わらん」
「入れ墨まで入れておるぞ」
袖からそれが見えていた。
「武士で入れ墨だと」
「何を考えておる」
「あの歩き方といい」
それもならず者のそれであった。
「少しは考えろ」
「それで何をしに来た」
「一体何の用だ」
皆眉を顰めさせる、そしてだった。
高杉は身構えてだ、刀を手にして言った。
「これはやはりな」
「だから待て、あの様な者斬るに値せぬ」
ここでも桂が止めた。
「お主いた誰もだ」
「出ることはないか」
「そうだ、しかし何をしに来たのか」
桂もこのことは真剣にいぶかしんだ。
「一体」
「それが気になるな」
久坂も応えた。
「まさか松陰先生に無礼を」
「その時は流石にだ」
桂は久坂には目を鋭くさせて言った。
「わしも黙っておらぬぞ」
「斬るか」
「そうする」
「流石にそうすれば許さぬか」
高杉は桂に問うた。
「その時は」
「うむ、そしてだ」
そのうえでというのだ。
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