第9話 無理っす
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かな。そうだ!……何か上手い言い訳をして逃れよう。
「俺はまだ鍛練中の身だ。教えれることは無い」
「いえ、そんなことはありません!徐晃殿に比べて、私は……」
「いや、俺もまだ未熟だ。上には上がいる。驕りは敗北への一歩だ」
「驕りは、敗北への一歩……」
あっ!何か語っちゃったっよ!!話をそらそう。
「関羽には、何か夢とかあるのか?」
「夢、ですか?」
「ああ」
「そう、ですね……。…私は、誰もが笑って過ごせる世界になればいいと思います。そのために、私は自分の力を揮いたい」
誰もが、ね……。
「関羽」
「はい?」
「誰もが笑って過ごせる世界。それは絶対に無理だ」
「どういうことですか」
関羽の声に若干の怒気が含まれる。怖いっす。
「さっき現れた、野盗。お前は1人殺した。その時点で、『誰もが笑って過ごせる世界』に当てはまっていない」
「ですが!奴らは悪です!自分たちの欲望のために、誰かを犠牲にすることを何とも思わない連中です!!」
「その通りだ」
「えっ?」
何だ、肯定されるとは思ってなかったのか。
お前の言うことが正しいに決まっているだろう。少なくとも、俺はそう思う。
「人を殺す、誰かを犠牲に自分が豊かになる。それに何も思わない連中に、意味など無い。説得という選択肢もあるだろうが、本当に改心したかどうかなんて判るはずが無い。俺たちは超…妖術師じゃないんだ」
「……」
「人間は嘘を吐くんだ。自分のためなら、いくらでも嘘を吐く。命が関わっているなら尚更だ。改心したと判断して見逃したとしても、どこかでまた悪事を働くかもしれない。誰かを殺すかもしれない。それは、見逃した人間の罪だと俺は思う」
だからこそ、俺は可能性のある人間は殺すべきだ。自分の価値観に従って、俺は人を殺す。
初めて人を殺した時とは大違いだな、まったく。
「だが、悪を犯した人間でもこの国に住む人間だ。『誰もが笑って過ごせる世界』を掲げるお前に、人を斬る資格は無い」
俺は置いていた【閃月】と二刀一対を手にすると、関羽を置いて歩いて行く。
宿の部屋に入り刀を置き、布団に腰を下ろす。徐々に自分が言った言葉を思い出す。
「俺何言ってんだよ!まだまだ未熟の俺が何で説教してんだよ!意味分からねぇ!本当に何言ってんだろ!」
………はぁ、記憶消したい。
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