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対比的な両雄
第四章

[8]前話
「リー将軍はあえて正装で出て来た」
「敗れたがな」
「そうした人だが」
「いつも真面目だな」
「その真面目さが出てな」
「むしろこちらが勝った感じだ」
 こう言うのだった、そして両者は文書を調印してからだった。
 その後で二人はメキシコとの戦争での思い出のことを話したりした、戦争が終わると二人は戦友同士に戻った。
 その話はリンカーンにも伝わった、すると彼は笑顔で言った。
「彼等はそれでいい」
「リー将軍もグラント将軍も」
「それでいいですか」
「生真面目なリー将軍と」
「そしてだらしないグラント将軍で」
「それが二人の個性でだ」
 それでというのだ。
「ありのままでな」
「いいですか」
「リー将軍もグラント将軍も」
「それで」
「そうだ、そしてだ」
 リンカーンはこうも言った。
「二人はまた戦友同士になりな」
「アメリカもですね」
「一つになりましたね」
「戻りましたね」
「そうなった、もう二度とだ」
 強い声で言った。
「分かれてはならない」
「リー将軍とグラント将軍の様に」
「そうなってはいけないですね」
「アメリカも」
「決して」
「南北に分かれ戦争となりだ」
 内戦に至ってというのだ。
「多くの血が流れた」
「そうなりました」
「この戦争により」
「受けた傷は大きいです」
「それもだ」
 戦争のそれもというのだ。
「癒す、それはこれからのことだ」
「ですね、それでは」
「もう二度とアメリカは分かれない」
「リー将軍とグラント将軍も」
「その様にしますね」
「両極端な者同士が同じ場所にいて共にいられる」
 リンカーンはここで微笑んだ、そのうえで周りに話した。
「それが合衆国だな」
「ですね、それは」
「それこそが合衆国です」
「主義主張や個性に関わらずです」
「誰もがいられる国です」
「その合衆国を護っていこう」
 こう言ってそうしてだった。
 リンカーンは戦後処理の政治に入った、アメリカが二度と分裂しない様にしてリーとグラントが再び戦わない様に。
 リーは非常に生真面目で謹厳な人物であったことは歴史に残っている、そして英雄であったことも。対するグラントは酒好きでだらしなかったが彼もまた英雄であったことと同じだ。その正反対な二人が同じ国にいて内戦の時は戦いそれが終わるとまた同じ国にいられる様になった。これは歴史にある通りである。アメリカという国のそれの。


対比的な両雄   完


                    2021・10・17
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