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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第120話『雨男』
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謎の雨が氷の天蓋に打ちつけて不気味な不協和音を立てる中、3つの戦場のうち1つに変化が生じる。


「影丸さん!!」


晴登の叫びを聞いて、1つの戦闘が終わったことを全員が知る。

それはフィールド中央で行なわれていた、影丸と雨男の決闘。だが残念なことに、影丸は空中に浮かぶ槍のような物で全身を貫かれ、ぐったりとその身を磔にされていた。よりにもよって、敵の親玉の方が残ってしまったのだ。


「楽しかったぜ、"黒龍"」


雨男が指を鳴らすと、影丸を貫いていた針が液体へと変化して血と共に滴り落ちた。身体を支えるものがなくなり、影丸も地面へと崩れ落ちる。気絶しているのかそれとも……ピクリとも動かない。


「それじゃ、後は杖の回収を──」


邪魔者もいなくなり、当初の目的を果たさんとする雨男。
その彼の目当ての杖を持つ山本は、外に逃げることも叶わず、会場の隅っこでジョーカーや護衛の人に守られていた。

しかし、その守りがアーサーや影丸を下した雨男に通用するとはとても思えない。最悪、全員やられて為す術なく杖を奪われるだろう。


──誰かが彼を止めないと。


今すぐ影丸の治療をしたいという気持ちはあるが、このままだと先にここにいる全ての魔術師が淘汰される。だってそれがスサノオの目的なのだから。
雨男をフリーにしていれば、その時はすぐにでも訪れるだろう。彼の強さはそれほどまでに卓越している。


──止めなきゃ。


しかし頭ではわかっていても、身体が言うことを聞かない。
当然だ。実力差がありすぎる。本能的に、挑むのを拒否しているのだ。同じくらいの背丈で同じくらいの年齢のはずなのに、まるで別次元の存在に思えた。正義感だけで立ち向かえる相手ではない。


──誰かが、やらなきゃ。


治療する手が止まり、雨男から目が離せなくなった。彼は一歩、また一歩と、ゆっくりではあるが山本たちの元へと向かっている。


──アーサーさんや影丸さんの意志が、無駄になる!


雨男の眼前を、風の刃が通り過ぎる。"意図的に外された"とわかるその攻撃。彼は首をもたげて、その攻撃が飛んできた方向に目を向ける。フードの下から鋭い視線が覗いた気がした。


「……へぇ。今度はお前か?」

「そ、それ以上動くな! 次は外さない!」


恐怖を押し殺し、晴登は雨男に立ちはだかることを決意した。無謀なことだとはわかっているが、無視することはできない。


「震えながら言うセリフかよ。……なぜ当てなかった? わかるぞ。お前、まだ人を殺したことないだろ? だから躊躇するんだ」

「う……」


"鎌鼬"をわざと外したことについて、そう言及してくる雨男。最初から狙っていれ
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