第120話『雨男』
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もしない雨男の物言いに、これ以上誰も手を出すことはできなかった。
アーサー、影丸、ついでに晴登を倒した相手を、残った誰が倒せようか。このままスサノオと敵対するよりも、見逃してもらう方がずっと良い。
雨男がゲートから出て行くと、ついて行くように兵士たちも出て行った。ただ、倒された兵は置き去りに。
──雨が、止んだ。
*
魔導祭の会場を離れ、軍隊のように兵士たちを引き連れる雨男。幸い、ここは人気の少ない森の中なので目立つことはない。このまま秘密裏に撤退する。
「"聖剣"と"黒龍"にトドメを刺せなかったが……まぁ重傷を負ったことには変わりない。俺らの障害にはならないだろう」
さっきまでの出来事を思い返しながら、雨男は歩みを進める。彼らの計画の障害となりうる、レベル5の魔術師の無力化には成功した。いくら新魔術師とはいえ、レベル5の旧魔術師はそれなりに厄介なのだ。
「誤算だったのは、俺の雨を防ぎ切ったあの白髪の少女か。あの屋根のせいで、とんだ無駄足を踏んでしまった。まぁ、そのおかげで楽しめたがな」
本来であれば、あの雨で魔術師たちを一掃する予定だったのだが、苦しくも全て防がれてしまった。だが結月のことを恨みはせず、むしろ感謝している。なぜなら強者と直接戦うことができたのだから。強いやつは好きだ。特に影丸は見どころがあった。
「あとは、三浦……"ハルト"と言ったか。これは予想外の収穫だった。くくっ」
そしてもう1人。彼の心に留まった人物がいた。それは彼にとって因縁深い名前で、思わず笑みが溢れてしまうほどだ。
脳裏にある人物を浮かべながら、雨男は雨の上がった空を見上げた。
「お前はまだそこにいたのか──"風神"」
葉を伝って落ちた雫が、水たまりに波紋を描いた。
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