第120話『雨男』
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らにしても、お前は生きられる」
「そんな条件……」
「飲めないか? やるだけ無駄じゃないだろう?」
「くっ……」
一体何が気に入られたのか、駆除リストから外された晴登。しかし、それ以外の人の運命が変わらないというのであれば手放しで喜ぶことはできない。
今、晴登は選択を迫られている。
要求を受けず自分以外の魔術師が殺されるのを指をくわえて眺めるか、要求を受けて全員が助かる運命を掴み取るか。
──どちらを選ぶか、考えるまでもなかった。
「……わかった」
「そう来なくちゃな」
晴登が要求を呑むと、雨男がニタリと笑った気がした。
「1つ言い忘れたが、殺しはしないといっても"殺す気で"いくからな。覚悟しろよ」
「……!」
「──それじゃ、始めようか」
空気が変わった。雨男が完全に臨戦態勢に入ったのだ。
もう身を守る腕輪はない。「殺す気で」と言われて、本当に殺されない保証もない。実質、命がけの勝負である。
──雨男が動いた。
「速っ……!」
小さな身体のどこにそんな力があるのか、地面を蹴った彼は刹那の間に晴登との距離を詰めた。そして掌が腹に押し当てられたかと思うと、そこから爆発したかのような衝撃が加わり、晴登は吹き飛ばされる。
「があっ!!」
「どうした、防ぐか避けるかしないとダメだろ? まさか見えなかったか?」
受け身を取れずに地面を転がり、疲弊した身体にさらにダメージを与えてしまう。
残念ながら雨男の言う通り、『見えなかった』が正解だ。スピードに目が追いついていない。
「俺が力を入れていたら、お前はもう死んでいるんだぞ? 手加減してないで本気でかかって来い」
思えば、さっきの攻撃はアーサーに大怪我を負わせた攻撃と類似していた。しかしあの時と違って、晴登のお腹は爆ぜていない。それは、彼が手加減していたことの何よりの証明である。
ふと腹部に触れると、服が水で湿っていた。
影丸に対して行なっていた攻撃を鑑みて、恐らくあの攻撃は『相手に触れた瞬間に水を弾けさせていた』と考えられる。水は発射する勢いを強めることで金属をも切断すると聞いたことがあるし、彼の能力が"水を高圧で発射できる"みたいなものだとしたら、弾丸のような雨の説明もつく。
「……いや、早とちりはダメか」
晴登は頭を振って冷静になる。
相手の力を見誤ることは、自らを窮地に追い込んでしまう。晴登はそれを本戦で身をもって味わった。だからまだ、彼の力を看破したと考えるのは早計だろう。
慎重に見極めなければ、晴登なんか一瞬でやられてしまう。
「集中──!」
晴登は立ち上がり、とりあえ
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