第120話『雨男』
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ば、俺を倒せただろと言わんばかりだ。
確かに、当てることはできた。けどそうしなかったのは……彼の言う通りなのかもしれない。牽制のために外したというのは建前で、"鎌鼬"を生身の人間に撃つことにビビっただけなのだ。
「人を殺すってのは──こうやるんだよ!」
刹那、雨男が姿を消したかと思うと、晴登のすぐ目の前に現れた。そしてそのまま広げた手が晴登の顔に向かって伸ばされ──
「て、"天翔波"っ!」
「ちっ! 鬱陶しい風だな」
間一髪のところで雨男を吹き飛ばすことに成功し、何とか一命を取り留める。危うく顔に穴が空くところだった。
「はぁ……はぁ……」
「もう息切れしてるのか? それじゃ俺には到底及ばないぞ」
「そうだ三浦! お前の出る幕じゃねぇ! 大人しく引き下がれ!」
焦りと疲れから息が上がる晴登。そんな晴登に忠告する雨男と、撤退を指示する終夜。
振り向いて見ると、敵の攻撃を退けながら、終夜がこちらに向かって叫んでいるのが見えた。
彼は何も間違っていない。至って冷静な判断だ。間違っているのは、勝ち筋の見えない相手に立ち向かう晴登の方なのだ。それでも、挑まなければならない壁というものは存在する。それが今だ。
「うん? 三浦? その風の魔術……あぁ、そういうことか。くく、まさかお前が……」
終夜の声を聞いて、なおさら覚悟を固めた。
その一方で、雨男は一人で何かに納得した様子を見せる。言い方からして、晴登についてのようだが……。
「よし決めた。お前は殺さない」
「……は?」
「ただし条件が1つ。俺と手合わせしろ」
「え、と……?」
予想外の提案がなされ、思わず素っ頓狂な声が洩れる。殺されないというのは喜ぶべき話なのだが、それならばなぜ戦う必要があるのだろうか。
「ルールはどちらかが降参するか戦闘不能になるまで。殺しは無しだ。それならいいだろ?」
「何、言って……」
「お前が勝てば、俺らは手を引く。悪くない話だと思わないか?」
淡々とルールを決める雨男。話に全然ついていけない。
さっきまでの殺意はどこへやら、ゲームをしようと言わんばかりの態度である。
「三浦聞くな! そいつが約束を守る保証はない!」
「うるさい」
「うおっ!?」
止めようと終夜が声を上げると、黙らせようと雨男がそっちに水弾を飛ばす。
間一髪で終夜は避けたが、その後ろにいた重装兵に弾が直撃し、なんとその装甲に穴を空けたのだった。
恐るべき威力。晴登は今からそんな相手に挑まなければならないのか。
「俺が勝てば、俺らの計画は継続。あの杖を手に入れて、お前以外の魔術師全員を殺す。だがどち
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