怪鳥
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。
「響ちゃん、ちょっと診せて! ……これ」
唇に手を当て、額から体温を測る。
「衰弱してる……」
「どうしよう……? ちょっとだけだけど食料はあるよ?」
「そんなものだけじゃ足りないでしょ」
ハルトは、少年を背負う。
おそらく九、十歳くらいの少年。だが、ハルトの背中にのしかかった重さは、明らかに平均のそれを下回っていた。
「ハルトさん?」
「軽い……急いであの医者のところに連れて行こう」
「うん」
響を下ろしたまま、ハルトはマシンウィンガーに跨る。バイクの車輪を百八十度転回させ、走らせる。
方角は合っているはずだと祈りながら、ハルトはバイクを急がせるが、見覚えのある場所には辿り着けない。
「……ねえ、ハルトさん」
響がおそるおそる尋ねた。
少年を挟んで、ハルトの後ろに座っている響。一人用のマシンウィンガーに三人乗りという定員オーバーだが、響は気にしない。
「何?」
「なんか、皆すごい勢いで走ってない?」
響の言葉に、ハルトは初めて周囲を見渡した。
誰も彼もが、鬼気迫る表情で走っている。中には、走って来た方を振り返る者もいる。
「確かに、みんな何かから逃げてる?」
「何から逃げてるんだろう?」
やがて、逃げる男性のうち一人がハルトに掴みかかって来た。ボロボロの服装と長いひげから、まさに浮浪者といった風貌の彼は、目を見張りながらハルトを見上げた。
「どうしたの?」
だが、ハルトにしがみつく男性は、ハルトへ訴えた。
「鳥だ! 鳥だ!」
「「鳥?」」
鳥と聞いて、ハルトと響は同時に野鳥公園の光景を思い浮かべた。実際、ハルトがよく訪れる見滝原公園はバードウォッチングのスポットとしても人気である。
そして。
奥の建物、その天井が弾け飛んだ。
「ひ、ひいいいいいいいい!」
「待って下さい! 一体何が……」
だが、男性はもうハルトの声が届かないほど遠くなっている。
彼から情報を仕入れることを諦めたハルトは、改めて彼が逃げてきた方向を見やる。
そして。
「な、何だあれ!?」
鳥。
そう呼ぶべきなのだろうか。羽毛がなく、牙がある鳥などいないが、赤いその体は、あたかも返り血で染まったかのようだった。人間とそう大差ない大きさのそれだが、
そして。
その凶悪そうな牙に挟まる、ぐにゃりと柔らかい肉片。それを見た瞬間、ハルトと響はぞっとする。
肉片を丸飲みした鳥___もはや、鳥と呼ぶのもおかしい。怪鳥と呼称すべきだろう___は、その赤い眼で周囲を見渡す。
ほとんどの人々が逃げ切ったこの場所。残っている獲物は、たった二人。
ハルトと響を睨み、吠えた。
おおよそ
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