第五十三話 雨の東京その七
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「それこそね」
「そうよね、けれどね」
「芥川自身は気にしていたのね」
「そうみたいよ、あと太宰は歯が悪くて」
また彼のことを話した。
「あちこち抜けてたらしいわよ」
「そうだったの」
「昔の人はよく歯が悪くなったのよ」
「歯磨きの関係?」
「今より歯磨き粉や歯ブラシもよくなかったし」
やはり今と比べるとかなり落ちる、歯磨き粉も今の様な練り歯磨きではなく粉歯磨きが主流であったのだ。
「歯を磨くことも少なくて」
「それでなのね」
「歯が悪い人多くてね」
「それで歯が抜けたりしてたのね」
「歯周病になったり」
そうした病気にもなってというのだ。
「それに虫歯にもね」
「なっていたのね」
「それで太宰もよ」
彼もというのだ。
「歯が結構以上に抜けてたらしいわ」
「四十かその辺りで亡くなってるのに?」
「今から見れば若いけれどね」
それでもというのだ。
「かなりね」
「歯が抜けていたのね」
「そうだったみたいよ」
「そうだったのね」
「あの人麻薬もやっていたし」
当時は合法だった、ヒロポンつまり覚醒剤も終戦後暫くは合法で煙草屋で普通に売られていた位だ。
「それに不摂生といったら」
「不摂生だったのね」
「麻薬だけじゃなくて」
それだけでなくというのだ。
「お酒も好きだったでしょ、煙草も吸ってたし」
「健康的なイメージはないわね」
「太宰自体にでしょ」
「結核のこともあるしね」
「だからね」
「歯が悪かったのね」
「ええ、もうね」
それこそというのだ。
「かなり抜けていて」
「そうした状況だったの」
「そうみたいよ」
こう話した。
「これがね」
「そこまで考えなかったわ」
「ちなみに乃木大将もかなりね」
日露戦争で獅子奮迅の働きを見せかつ武士道を世界に見せたこの人もというのだ。
「歯が抜けていたそうよ」
「そうだったの」
「ちなみにこの人は物凄く質素だったらしいわ」
若い頃は遊びもしたがだ。
「稗ご飯を食べていてね」
「えっ、稗って」
「まああの頃ならあるけれど」
「軍の偉い人でもなの」
「稗食べていたの」
「それがお家の常食で」
石原莞爾が家に来た時に気を使って白米を出して普段食べているものを出して欲しいと言われたという話が残っている。
「奮発して日の丸弁当」
「いや、奮発じゃないでしょ」
「日の丸弁当って」
「滅茶苦茶質素じゃない」
「ご飯と梅干だけでしょ」
「お弁当でも相当よ」
咲達もこれには驚いた。
「そこまで質素なんて」
「いや、驚いたわ」
「それで乃木大将もなのね」
「歯はそうだったのね」
「ええ、だからね」
それでというのだ。
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