第一章
[2]次話
いい歳したおっさんでも
ある大学で経済学の教授を務めている織田達雄は四十代後半にさしかかっている、若い時はすらりとした長身も今では肥満しきり。
脂肪率は四十パーセントに達しいつも脂っぽい。眼鏡をかけて黒髪をやや伸ばしセンターで分けているが。
「眼鏡も髪の毛も脂っぽいな」
「若い時は痩せていたっていうけれど」
「今じゃ中年太りの限界を超えて」
「完全に肥満ね」
学生達もこう言っていた、だが公平で穏やかで思いやりのある紳士であり人格では評判はよかった。また経済学者としても評価が高かった。
だがそれでもだった。
家では妻の幸子誰が見ても美人である彼女にこう言われていた。
「あなた本当に痩せないとね」
「健康に悪いかな」
「そうよ、甘いものは控えて」
そうしてというのだ。
「運動もして」
「僕運動嫌いなんだけれど」
「歩くか自転車でも乗ってよ」
妻は夫に怒った顔で言った、長身で大きなはっきりした目で小さな唇で黒髪を後ろで団子にしている。長身でスタイルもかなりいい。
「運動したらね」
「痩せるかな」
「そうよ、本当に痩せないとよ」
太り過ぎではというのだ。
「健康に悪いわよ」
「健康診断の結果もよくないしね」
「自分でわかってるならね」
「痩せろっていうんだね」
「甘いものも控えてね」
家で大好物のドーナツを食べる夫に言った、だが。
織田の生活は変わらず太ったままだった、それで妻に言われていたが。
ある日息子が買ってきた週刊漫画雑誌を読んでだ、妻に言った。
「最近亘鍋茉祐ちゃんって娘人気なのか」
「今人気急上昇中よ」
妻はすぐに答えた。
「グループの中でもね」
「そうなんだな」
「それがどうかしたの?」
「いや、グラビアでかなり可愛かったから」
漫画雑誌の巻頭のそれがというのだ。
「目に入ったんだ」
「そうだったのね」
「うん、ちょっとね」
こう妻に返してこの時からだった。
織田はそのアイドルの応援をはじめた、その応援はかなりのもので彼女が歌っているCDを集めて家や研究室ではいつも聴いてだった。
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