第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その5
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西ドイツ・アウクスブルク
『象の檻』と呼ばれる奇妙な建物
ここはNATO最前線の西ドイツにあるNSAの通信傍受施設
機械の操作音が鳴り響く室内に、電話が入る
鳴り響くベルを疎ましく思う男は、渋い顔をして受話器を取る
「此方。アウクスブルク通信観測所……」
受話器の向こうの人物がこう告げた
「カリーニングラードで、固形燃料ロケットの発射体制が整いつつある」
受話器を右耳に当てた侭の男は、其の儘固まった
顔色は蒼白になり、身動ぎすらしない
静かに受話器を置くと、椅子に深く腰掛けた
「『ヴァンデンバーグ』から連絡だ……」
米海軍所属の情報収集艦、USNS.ジェネラル・ホイトS. ヴァンデンバーグ (T-AGM-10)
同艦は、第二次大戦中にジェネラル・G.O.スクワイア級輸送船として建造
USNS.ハリー・テイラー(T-AP-145)という艦名で海軍に在籍後、1961年に米空軍に売却
再度、1964年に米海軍に買収されたと言う数奇な運命をたどった船……
対ソ戦における通信傍受艦として米海軍によって運用
バルト海上に展開し、独ソ両軍の動きを逐一監視していた
圧倒的な航空優勢を誇る米空軍の高高度航空偵察は、この世界でも常識であった
1961年のソ連上空におけるU-2偵察機撃墜事件、1973年のカシュガルハイヴ造営……
ソ連防空軍の高高度迎撃ミサイルの配備や光線級の登場によって、状況は一変する
高高度偵察機の相次ぐ損失により、情報収集艦の担う防諜の比重は以前よりも増大した
この数年来、ソ連の急速な赤化工作によって、活動の場をアフリカ大陸に移していた
同大陸を管轄下に置く米欧州軍は、パレオロゴス作戦においてこの船を呼び寄せた
通信部隊の補助艦艇という形で、バルト海上に展開
遠路はるばる、セネガルのダカール港より、態々引っ張り出されてきたのだ
通信室に居る職員達は、俄かに色めき立つ
大型の通信アンテナに、微弱だがICBMに関する送受信が観測される
基本的にICBMの発射実験は太平洋、カムチャッカ半島沖で行われた
ソ連軍のミサイル発射兆候……
しかも僻地のカムチャツカ半島や極東ではなく、バルト海
「欧州軍本部に連絡だ」
奥にある机から声が上がる
声の主は基地司令であった
ある職員が立ち上がり、司令に問いかける
「司令、ドイツ軍には……」
「連中は恐らくバルト海上に展開している不審船の対応で手一杯であろう。
それに欧州軍本部の面子もある……。
本部に一任しようではないか」
基地司令は、その様に部下の問いに応じた
「ペンタゴンに連絡だ」
米国 ワシントン.D.C
ソ連のミサイル発射兆
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