見滝原南の医者
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! 戦いを止めてもいいですわよ? あなたが、わたくしの願いを叶えてくれるのなら……あの方に会わせてくれるのなら!」
彼女は顔を大きく歪める。
「そんなことができますの? ランサー。わたくしと同様、本来の世界を追放され、見滝原という牢獄に閉じ込められたあなたが、わたくしを助けることができますの?」
「それは……」
サーヴァントが、見滝原に到達する前の世界。
つまり、彼女たちが本来いるべき世界のことである。
響が以前、彼女にとって大切な者への未練を乗り越えられたのは、本当に偶然だ。
「ウィザード。それにランサー。ええ、ええ。戦いなんてやめてあげてもいいですわ。わたくしをあの方に会わせてくれるのなら……!」
元の世界。
そんな願い、ハルトたちに叶えられるわけがない。
黙るほか選択肢のないハルトと響に、狂三は鼻を鳴らした。
「結局人の善意なんて、大したものがないのですから、仕方ありませんわね。……それではお医者様。こちらを」
狂三は感謝を述べながら机に紙袋を置いた。
「金か……もう私には必要ないが」
「いいえ。お忘れですか? この見滝原南では、金銀よりも物の方にこそ価値があるのですから……」
「食料か……感謝する」
袋を閉じた医者は、そのままそれを部屋の奥の倉庫に収納した。
「君も、あのバイクは隠した方がいい。この地の者は、盗みをはたらくことが多い。野ざらしにしてはいけない」
その一言に、ハルトはぞっとした。
物音をたてずに立ち、静かに外のマシンウィンガーのもとへ向かう。
「……よかった」
無事に置いてあるマシンウィンガーに安堵する。コネクトの魔法で黒い合羽を引っ張り出し、マシンウィンガーに被せた。
「バイクで来るなんて、とんだ不用心ですわね」
そんなハルトの背後に、狂三が回り込んでいる。
心臓が口から飛び出ないように装いながら、ハルトはマシンウィンガーに背中を押し付ける。
「えっと……狂三、で、いいんだよね?」
「お好きにどうぞ? ウィザード」
狂三は両手を腰で組みながら、姿勢を低くする。
「それにしても、貴方も物好きですわね? 蒼井晶のような危険人物をそこまで必死に守ろうとするなんて」
「……俺の信条は、人を助けることだから。たとえ犯罪紛いをした人であっても……」
「あらあら。ご立派ですこと」
クスクスとほほ笑む狂三。
彼女はそのまま、ハルトへ背を向けた。
「またマスターを引き戻そうというのなら……分かっていますわね?」
狂三がさらに顔を近づける。
彼女の赤い眼に、ハルトの険しい顔が映る。
「……また、わたくしと戦うことになりますわよ?」
「俺は人を……一人でも多く
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