第65話 提督、万歳!
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てはならない。胃がギュッと閉まるのを感じるが、表情に出すのは尊敬すべき敵に対する身分的な蔑視だ。
「どうやらまだ死んではいないようだな。息災で結構なことだ」
「はっ」
レッペンシュテット准将の眉がピクピクと動いているのがはっきりわかる。拳が届かない画面越しでよかった。
「で、取り残された間抜けはどのくらいいる?」
「……救出していただけるのですか? 巡航艦四隻に詰め込める量ではございませんぞ」
「そんなことはわかっている。私は貴官に『数』を聞いているのだ」
できる限りの軽蔑を込めて俺はレッペンシュテット准将に言ってやったが、それがよほどに意外だったのか、画面の中の彼は明らかに表情から怒りを消して、しばらく顎に手を当ててから応えた。
「現時点で把握しているのは四万一〇七五名です。軍属も含めて」
「ということは……地上戦闘は殆ど行われていないということか?」
わざとらしく資料を読むふりで視線を下に落としつつ言うと、周辺視野に入った彼は大きく頷いた。
「四月二三日に叛乱軍がこの地に進攻してきて以来、戦闘らしい戦闘は地上では起こっておりません。ですが市街外周は徹底的に爆撃され、制宙・制空両方とも失われております」
「シェーニンゲン子爵を助けるために、アルレスハイムとヴァンフリートからわざわざ一〇〇〇隻も割いたのだ。被害も少なからず出ている。おかげさまでイゼルローン駐留艦隊司令官のメリングハウゼン上級大将閣下は痛くお怒りだ」
「……それではやはり」
「残留者全員で自殺でもしてくれるのか。そうしてくれれば面倒が社会秩序維持局に移るだけで、私としては大歓迎だ。これ以上損害も出さずに済む」
「失礼だが、ボーデヴィヒ准将。確認したいが貴官が救出作戦の指揮をとられたのか?」
「それ以外に聞こえたのなら、貴様はずいぶんと耳が遠いようだな」
「いえ。こういっては何ですが意外に思えまして……」
そうだろう。見るからに門閥貴族出身の青年貴族士官の俺が、前線で孤立する部隊の救出に動くなどありえないはずだ。だからこそシナリオが生きる。思い切り不遜で不愉快な表情をわざと浮かべて、俺はそれに応えた。
「私はさる高貴な方からの命令を受けている」
それが誰だかは言わない。だが、その一言でレッペンシュテット准将は悟ってくれたようだった。自分達を救出することで利益を享受する勢力。少なくとも統括官とかいう間抜けがいる門閥貴族ではない誰かの指示でボーデヴィヒ准将は動いている、と。ゴールデンバウム王朝銀河帝国にてそれに該当する人物は一人しかいない。
「道理であれほど見事な強襲降下ができるわけだ」
「……納得がいったのなら、話を進める。想定では二万人程度を考えていたが、その倍となれば話は変わる。用意できたのは戦艦八隻を含む三〇
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