暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第65話 提督、万歳! 
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 宇宙歴七八九年 五月一五日 エル=ファシル星域エル=ファシル星系


 第一段階はものの見事に成功した。四隻の巡航艦の指揮を執ったイェレ=フィンク中佐が奇妙に残念がる程に、あっさりと帝国軍の首脳部は同盟軍の手に落ちた。それなりの食事に混ぜ込んだ睡眠薬が効いて、殆どぐっすりとお休み状態で拘束されている。各艦で数人ほど薬に抵抗した者がいたらしいが、ブラスターと装甲戦闘服では勝負にならなかった。おそらくは情報将校だったのだろう、自白剤を打つまでもなく全員亡くなった。

 起きていた時にフィンク中佐が確認したところによると、わざわざ増援が来たことを確認させるために、爺様とアップルトン准将が惑星エル=ファシルよりさほど遠くはなれていない障害物の少ない宙域で、大規模な擬似戦闘までやってのけたというのに、奴らはそれすら観測してなかったらしい。
 
 通信封鎖しているのでエル・セラトからの観測結果でしかないが、擬似戦闘の勝敗はどうやら爺様の圧倒的な勝利だったようだ。そりゃぁ三対一で爺様に勝てるような用兵家なんて、金髪の孺子かアスターテの英雄ぐらいなものだろう。

「さてさて次は地上に残る帝国軍だが……」

 今度はそう簡単には騙されてはくれないだろう。俺の顔を見て貴族で准将だと知ったとたんに態度が変わった第一陣の連中とは違い、爆撃や示威行動を見せても市街から一歩も出てこない根性の座った奴らだ。その上、巡航艦が脱出した翌日には各都市から部隊の大移動が始まり、中央都市周辺の耕作地にも不穏な動きがみられる。長期戦に備えた自給体制の構築だ。シナリオや教練は同盟軍でも一応実施されているが、最前線で畑を作る状況などまずもってあり得ないから、だいたいおざなりにされている。それを奴らは本気でやろうとしている。

 彼らに接触するのは、『逃げ出した連中から情報を獲得し、改めて救出作戦を立案実施する』タイミング。すなわち改めて帝国軍側に統一された指揮編制が成立したと確認できる状況になった時。俺は覚悟を決めて超光速通信を起動させると、そこには俺と同い年ほどの若い帝国軍大尉が現れた。画面の中の彼は、こちらが准将であると分かると驚き、なぜか狂喜して画面の外に出ていく。そして数分待たされた挙句、次に画面に現れたのは年配の准将だった。

「お初にお目にかかる。フォルカー=レッペンシュテット准将です。現在、遠征軍地上部隊の指揮をとっております。」
「私はジークフリート=フォン=ボーデヴィヒ准将だ」

 どう見ても百戦錬磨の陸戦指揮官。誰が見てもゴリゴリのレンジャー上がりのようなディディエ少将とは正反対の、糞真面目で筋肉系理論派の機甲指揮官と言った面持ち。ディディエ少将がゴリラなら、こちらはキツネだ。いかにも手ごわい相手に、俺は『嫌々仕事をする青年貴族の准将』を演じなく
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ