第二部 1978年
ソ連の長い手
ソ連の落日
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日の落ち始めたハバロフスク市内
一機のロボットが、まるで巨人の様に、居並ぶ建物の間を闊歩する
夜間警邏中であった警察は、振動音に気付いく
市内を蹂躙する、見慣れぬ形の戦術機に拳銃を向ける
「あっ、あれは!」
両手で構えた拳銃を向けるも、どんどん近づいて来る機体にたじろぐ
18メートル程度だと思っていた機体は、接近するたびに大きく感じる
黄色く光る目が不気味に輝き、見る者を畏怖させる
丁度、レーニン広場の脇に立つハバロフスク地方庁舎の前に通りかかった時、彼等は実感した
地方庁舎を睥睨する白亜の機体……、ゆうに30メートルはあろうか
指揮官の号令の下、一斉に拳銃が火を噴く
しかし、雷鳴の様な音と共に放たれた弾丸は、全て弾き返された
止めてある警邏車や装甲車を、勢いよく弾き飛ばす
バリケード代わりに持ち込んだ囚人護送車は、左側面が潰れると同時に全ての窓が割れる
其の儘、勢いに乗って右側に勢いよく横転した
ボンネットより煙が立ち上がると同時に軋む様な音が聞こえる
「逃げろ、燃料タンクが爆発するぞ」
隊長格の男は、身の危険を感じると叫んだ
尚も機体は止まることなく、彼等の方へ突っ込んでくる
「逃げろ」
誰かがそう叫ぶと、その場は混乱の極みに至る
己が命が惜しい警官たちは、四散していった
ゼオライマーが接近し、激しい銃撃戦が始まった地方庁舎
まさに、その建物の裏口からセダンの一団が走り抜けていく
前後をパトカーに警護された最新型のZiL-4104(ZiL-115)
低車高で幅広のシルエットをした3・5トンの車体が全速力で市街を抜け出そうとする
既に道路は、ゼオライマーの出現によって渋滞状態
軍や交通警察が、無理やりに市街に入ってくる車を追い返すも混雑していた
空港から市街に向かうカール・マルクス通りは、すし詰め状態で身動きが取れずにいる
クラクションの音が引っ切り無しに聞こえ、ジャズ音楽の様に感じさせるほどであった
車内にいるソ連の最高指導者は、部下を一喝する
「早く、追い払え」
苛立ちを抑えるために、右の食指と中指に挟んだ口つきタバコを深く吸い込む
紫煙を勢い良く吐き出すと、社内に設置された自動車電話を取る
受話器を持ち上げ、ダイヤルを回すと男はこう告げた
「ハバロフスク空港から有りっ丈の戦術機部隊を出せ。今すぐにだ」
受話器を乱暴に置くと、後部座席に踏ん反り返った
レニングラーツカヤ通りにある、エネルゴプラザ
隣に立つ、労働組合文化宮殿と共に周囲には幾重もの厳重な警備が張り巡らされている
その建物の地下にある、KGBの秘密の避難所
KGB長官と幹部達はゼオライマー接近の報を受け、首脳を見捨てる形で、一足先に逃げ込んでいた
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