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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第三章 〜心の在処〜
その十二
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 夕食後、リビングで楓の淹れてくれたアイスティーを飲みながらテレビを見る稟。と廊下の方から小さな足音が近付いてきた。プリムラだ。

「あ、あの……りん……いる……?」

「ああ。どうかしたのか?」

「その……ね……」

 何気なく返事をしてから、思わず目を見開く。なぜなら、いつも無表情のプリムラが、確かに恥ずかしそうに頬を赤らめているのだから。

「プリムラ……だよな……?」

「う、うん……」

 いつもとは明らかに様子が違う。思わず楓と顔を見合わせるが、楓も困惑顔だ。ふと思い至り、慌てる。

「もしかして雨に濡れて風邪を引いたとか!? 何か顔が熱っぽそうだし」

「え、う、ううん、大丈……」

 否定しようとするプリムラだが、若干暴走状態の稟の耳には届かない。

「楓、救急車……いや、この場合は魔王のおじさんに連絡した方がいいのか!?」

「は、はいっ!」

「え? ええ? えええ!?」

「隣までひとっ走り行って呼んでくるから、楓は風邪薬と氷嚢の準備を頼む!」

 プリムラの困惑にも気付かずさらに暴走する稟。というかお前は親馬鹿なお父さんか。

「わ、分かりました! すぐに……!」

 今にも飛び出して行きそうな稟に、慌てながらも答える楓。しかし、

「ち、違うのおっ!」

「え……?」

「……?」

 まず聞いたことのないようなプリムラの大声に我に返る二人。

「べ、別にどこもおかしくない……ただ、その……お願いがあって……」

「お願い……?」

 頷くプリムラ。

「こ、これから……ね? ……あの……えっと……だから……」

 何度か逡巡した後、口を開く。

「お、お兄ちゃんって呼んで……いい……?」

 一瞬、その意味が理解できなかった。しばらくしてようやく、“お兄ちゃん”という単語が頭の中で実像を結ぶ。

「……お兄……ちゃん……?」

 プリムラの言葉の意味を確かめるように小さく呟く稟。プリムラは顔を真っ赤にして俯きながら、稟の返事を待っている。

「ははっ。そっか……」

 それが、稟がプリムラに言った『家族になる』ということの答え。稟の胸に温かさが広がる。自然と顔に笑みが浮かぶ。
プリムラは変わることを受け入れた。その事実が嬉しくて仕方が無い。

「ダメ……?」

 不安そうな顔と声で稟の様子を伺うプリムラ。稟の答えは一つだ。

「いいに決まってるだろ」

 そう言いながら、ぽんとプリムラの頭に優しく手を置き、くしゃくしゃと頭を撫でる。

「あ……」

 プリムラの表情が明るくなる。それは稟が思い描いていたよりもはるかに可愛く、魅力的な表情だった。

「あと
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