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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第三章 〜心の在処〜
その十二
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伝えてくれているプリムラ。

「……どこにもいないわけじゃない。ちゃんといる。リコリスは今もプリムラを見守ってる。傍には居られなくても、ずっとだ」

 でもな?

「“土見稟”も、プリムラに笑っていて欲しいと思ってるんだ」

「……つちみ……りん……?」

 初めて、プリムラの瞳の輝きが変わった。……ずっと気付かないままだった。プリムラの瞳にはリコリスの残したものしか映っていなかったことに。しかし、今のプリムラは、ただリコリスが口にしていた“りん”ではなく、目の前の“土見稟”を見ている。

『忘れるなよ。お前はお前だ。人は誰しも、自分以外の存在になんかなれはしないんだ』

 つい先程の柳哉の台詞を思い出す。自分はリコリスの代わりになんかなれない。だから……、

「だから、これからは俺が迎えに来る」

「……迎え……に……?」

「ああ。リコリスの代わりに、じゃなくてプリムラの家族である土見稟として、な」

 背後に幼馴染の気配を感じながら続ける。

「俺が……いや俺達がプリムラの家族になる。俺達だけじゃない。皆がプリムラのことを大事に思ってる」

 辛ければ弱音を吐けばいい。寂しい時はいつも傍にいる。だから……

「……だから、もうどこにも行くな」

「……りん……」

 プリムラの目が見開かれる。

「……りん、が……迎え……に……?」

「ああ。約束だ」

 プリムラの雨に濡れた前髪を払いつつ、稟は出来うる限り優しく笑った。

「……さあ、帰ろう。皆が待ってる」

 そう言って、手を差し伸べる。

「……あ……あ、う……あぁ……」

 感情が、溢れ出そうとしている。目の前の少女が、永く表出させることの出来なかった感情が。

「わあああぁぁ……っ!!!!」

 しがみ付き、言葉にならない声を上げて泣くプリムラを、稟はそっと抱きしめた。そして、背後に目を遣ると、そこにいた幼馴染が小さく頷き、稟の前へ回り込む。稟に傘を差し出し、そのままプリムラを後ろから抱きしめた。

「かえ……で……?」

 いきなり後ろから抱きしめられ、驚くプリムラに楓は優しく微笑んだ。

「……帰りましょう。皆が待っていますよ」

「……うん……うん!」

 頷きながらもさらに涙をこぼすプリムラ。ありのままの感情がそこにあった。邪魔をするものは何もない。本当の心のままに、プリムラは泣き続けた。
 感情を出せない、出し方を知らない少女。それが過去形になった瞬間だった。
 しばらく経ち、プリムラが泣き止む頃にはすっかり雨は上がり、日が差してきていた。

「あ、見てください」

 楓に言われて見てみると、空に七色の橋が掛かっていた。

「……綺麗……」


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