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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第三章 〜心の在処〜
その十一
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の前でだけは多少なりとも感情を出した」

 喜び、怒り、哀しみ、笑った。

「プリムラが持っていたあのぬいぐるみはね、以前にリコリスが人界に来た時にお土産として買ったものなんだよ」

 だからこそプリムラは猫に興味を持った。唯一の家族からの贈り物だから。

「唯一の、家族……」

「リムちゃん……」

 稟も楓も後悔していた。一緒にいれば、それでどうにかなる。そんな想いが、傍にいるはずだったプリムラを一人にしていた。どうやら自分はまったく成長していないらしい。いつだって、大切なことに気付くのが遅すぎる。

「そして、その姉が好きだった一人の人族にも同様に興味を持った。」

 かつてリコリスが人界を訪れた時に出会い、憧れ続けた少年、土見稟。

「まさか、その興味対象に会うためだけに人界まで来ちまうとは夢にも思わなかったがな」

 呆れたような口調で神王が言う。彼らにしてみれば晴天の霹靂もいいところだっただろう。

「俺がリコリスと会っていた?」

「気にしなくてもいいよ。覚えていないのも当然だろうからね」

(いや、覚えてはいるのだろう。でも、あの時のリコリスは……)

 その先は口にはしなかった。ここには柳哉もいる。彼ならば真相に辿り着いてしまう可能性があるからだ。もっとも、真相に辿り着いたところで、それを稟に自分から話すようなことはしないだろうが……念には念を入れて、である。

「リコリスは、一人でいるプリムラを迎えに行ったことがあるんですね?」

「……過去に一度だけ、プリムラが施設を抜け出したことがあってね……その時にプリムラを連れて帰って来たのが……」

「確か、リコリスだったな。そん時以来だな。プリムラがリコリスの後を付いて回るようになったのは」

(待ってるんだな……あいつ)

 ならば、やるべき事は一つだ。

「ありがとうございます。おかげで確信が持てました。あいつを……プリムラを迎えに行ってきます」

 神王と魔王の二人に望みを託された稟は(きびす)を返す。そこに声が掛かる。柳哉だ。

「稟」

「?」

「忘れるなよ。お前はお前だ。人は誰しも、自分以外の存在になんかなれはしないんだ」

 土見稟ではリコリスの代わりにはなれない。リコリスの代わりになれるのはリコリスだけなのだ。

「ああ、分かってる」

 それだけ言うと、稟は雨の中を出て行った。


          *     *     *     *     *     *


 稟が出ていってすぐ、柳哉は楓に声を掛けていた。

「楓、お前も行って来な」

「あ、でも……」

 躊躇(ためら)う楓。しかし、

「家族、なんだろう?」

 その言
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