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10月の初め、私が家に帰ると、お母さんが
「香波ちゃん さっき 巌さんって方から 電話があってね バクが死んだって 私 何のことだか 犬なの? 帰ってきたら、折り返し電話しますって 電話してみて」
私は、一瞬 まさか バクじゃぁないよね 元気だったじぁない と、思いながら、電話してみた。
「おぉ 香波ちゃん バクがな さっき 海の見える所に埋めて来ょった。今朝から 姿が見えないんでどうしたのかなって思ってたんじゃが 繋いでいた紐を食いちぎっちょった 日暮れになっても戻ってこんかったでー 探しに行ったら 岩場が見渡せる石の上でな・・顔を石に乗せたままの姿で海辺を見たままな 香波ちゃんを見守っているようだったよ」
「巌さん あんなに元気だったじゃぁない どうしてー 私 夏に海で無理させちゃたんだ」
「あいつも もう 13才じゃ もう、去年から元気無かったけん それでもな夏は 香波ちゃんと 想い出をつくって喜んどったじゃろ・・一時、元気になったかなって思っちょたんだがー 頑張りよった 最後は、幸せそうな寝顔だったよ」
私は、電話を切った後もそこから動けなかった。私があんなにはしゃいでしまったから・・寿命縮めてしまったんだろうか・・バクまで、私から・・遠くに行ってしまうの―。
私は、部屋にこもって、ずーと泣いていた。お姉ちゃんが
「お母様から聞いたわよ どう 声 掛けたら良いのかわからないけど 納得 行くまで泣きなさい」と、慰めに来てくれた。
そして、どれくらい時間が過ぎたんだろうか、下に降りていくと、お父さんは、まだ、起きていて
「お父さん すみません 私 このまま 寝ます」と、言ったら
「うむー 香波 悲しむ気持ち、わかるが ワシは思うんだが バクはなー 香波を見守る為に 側に来たかったんじゃぁないのかな いつも 側に居たかったんじゃ だから、そんなに落ち込んでいたら そこに居るバクも悲しむぞ 元気な香波で居て欲しいと思っているはずだから」
「お父さん・・ありがとう そーだよね おやすみなさい」
そう言ったものの、部屋に帰っても、涙が止まらなかった。ずーと、眠れなかったけど、朝、顔を洗って出て行くと、お姉ちゃんが
「まぁ 香波 いいから 今日は お休みしなさい そんな顔でお店に出る訳には・・」
「お姉ちゃん 後で 冷やすから・・ 私 バクに元気なとこ見せなきゃ 安心させられないやん」
「そう じゃぁ 遅れてもいいからね 香波 強くなったね」
「うん お姉ちゃんの妹なんだから」
お姉ちゃんは、私を抱きしめて、額にチュッとしてくれた。
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