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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第三章 〜心の在処〜
その十
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……」

「リコリス?」

 初めて聞く名前のはずだ。学園の生徒にも、そんな名前の知り合いはいない。学園外も同様だ。しかし、なぜか琴線に触れるものがあった。

「……待ってれば、来てくれるかなって……」

 プリムラが、ここまで好意を表す相手。その人のことが知りたい、と純粋に興味が湧く。

「……お姉ちゃん……来てくれない……」

 しかし、“リコリス”のことを教えるつもりは、プリムラには無いようだ。その細い肩は頼りなく、とても儚げだったが、今の稟には掛ける言葉が見つからなかった。

(今度、魔王のおじさんに聞いてみるか)

 そしてその機会は、思ったよりも早く訪れることになる。


          *     *     *     *     *     *


「放送部……ですか?」

「ああ、まだ正式にってわけじゃないけどな」

 夕食後、楓とプリムラに事情を説明し、何だかんだで手伝うことになった、と答える稟。

「良かったです」

「へ……?」

「稟くんはずっと部活動をしていませんでした。もしかしたら、私を気遣ってのことかもしれないって思ってましたから」

「……確かにそれもあったかもな。ま、部活っていってもそんなに肩に力を入れてやるようなのじゃないし」

 ま、興味があったり暇だったりしたら見にくるといい、と言う稟に楽しそうです、と答える楓。プリムラも稟が行くなら、とのこと。

「ま、人手が足りない時なんかは応援を頼むかもしれないけどな」

 小さく笑って言った稟に楓も微笑んだ。

「それで、明日の事なんですが……」

「ん? 何かあったっけ?」

「忘れちゃったんですか? リムちゃんの冬物のお洋服を買いに行くんです」

 ちなみに明日は秋分の日で学園は休みだ。ちょうど今週の頭に楓と約束したのだが……。
 
「……ああ、うん。大丈夫だ、忘れてないぞ?」

 いや、明らかに忘れてただろう。

「……」

 プリムラの視線に無言の圧力を感じるのははたして気のせいだろうか?

「それでですね、天気予報では明日は雨みたいなんです」

「そっか。さすがに雨の中を行くのもな……」

 楓の出してくれた助け舟に飛びつく稟。

「まあ、明日の朝の空模様を見て決めるか」

「そうですね」

 しかしこの翌日、事件が起きることになる。


          *     *     *     *     *     *


「雨、か」

 休日には珍しく、楓に起こされる前に目覚めた稟。それというのも、まるで梅雨のさかりのような激しい雨音のせいだ。カーテン越しに窓の外を見るが、まさに絵に描いたようなどしゃ降りだ
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