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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第三章 〜心の在処〜
その九
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覚えておくのは決して無駄じゃないぞ?」

「魔法が使えない時、ですか?」

「ん……まあ、な」

 少し複雑そうな顔になる柳哉。

「でも、余程の事がないとそんな事にはならないよ?」

 うんうん、とネリネも頷いている。しかし、柳哉は渋い顔だ。

「その、“余程の事”が起きてしまうのが世の中ってものだろう? 現に……」

「「現に?」」

「……いや、何でもない。忘れてくれ」

「「??」」

 首を傾げるシアとネリネ。

「それよりも、だ。シア、良ければ俺が教えようか? 英語と歴史」

「? うん、それはありがたいんだけど……」

「何か不都合でもあるのか?」

「ううん。ただ、迷惑じゃないのかなーって」

「今更だろう?」

 確かに。今までにも何度かシアに教えてきた柳哉だ。それに、誰かに勉強を教える、という事は教えられる側だけでなく、教える側にもメリットがある。それは人に教える際、自分自身のおさらいができる、というものだ。それによってより深く理解できたり、忘れかけていた事柄を思い出したり、あるいは間違って覚えていた事に気付いたり、自分とは異なる考えを逆に教えられたり、と多岐に(わた)る。

「それじゃ、お願いしてもいいかな?」

「おう、こちらこそよろしく」

「あの、私も混ざってよろしいでしょうか?」

「俺は別に構わないけど……シアはどうだ?」

 全然構わないッスよー、との返答。

「それでは、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしく」


          *     *     *     *     *     *


 一方。

(……ん?)

 樹に頼まれて学食にある自販機に向かう途中、なんとなく見られている気配を感じて稟は振り返った。それと同時に視界からささっと紫の髪が消える。その髪の持ち主には心当たりがあった。

(デイジーか?)

 シアを熱心に放送部に勧誘していた隣のクラスの女子生徒だ。夏休みが終わってからはほとんどちょっかいをかけてくることはなくなったが、どうやらまだ諦めてはいないらしい。

(でもなんで俺の方に来るんだ?)

 あくまでもデイジーの目当てはシアであって稟ではない。そう考えている間にもデイジーがついて来る気配がする。もしかしなくても稟に何か用事があるようだ。

(さて、どうするか)

 少なくとも害意は感じない。ならば……

(ここはあえて放置しとくか)

 そう結論し、稟は再び歩き始めた。

(嬉しそうだな……)

 思わず頬を緩める稟。後ろをついて来る気配が嬉しそうに跳ねている。気付かれなかった、と思っているのだろう。その姿を想像すると、やけに微笑ま
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