第五十二話 夏になる前にその八
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「もうよね」
「大事なのは結婚する前に見てね」
そうしてというのだ。
「じっくりとね」
「見極めることね」
「結婚したら簡単には別れられないわよ」
「しかも離婚歴が付くんだ」
父は社会的なことも話した。
「だからな」
「出来る限りよね」
「見極めるんだ、何年かかってもいい」
「何年もなの」
「そうだ、そうしてな」
そのうえでというのだ。
「見極めるんだ」
「そうすることね」
「じっくりとな」
「そうですか」
「そしてだ」
ここでまた言う父だった。
「家庭も見るんだ」
「相手の」
「そうだ、だからな」
それでというのだ。
「結婚はする時もな」
「急がないことね」
「そうだ、焦らないでな」
そうしてというのだ。
「相手も家庭もな」
「じっくりとなのね」
「見てな」
そうしてというのだ。
「見極めてだ」
「結婚するといいのね」
「本当に急ぐことはないんだ」
父の声は落ち着いたものだった。
「本当にな」
「さもないと不幸になるのは自分だからな」
「それでよね」
「ああ、だからな」
「よく見ることね」
「ああ、そうしろ」
こう言うのだった。
「くれぐれもな」
「慎重になのね」
「そうだ、慎重にな」
「相手もお家も見ることね」
「お金や地位じゃなくてな」
「人柄ね」
「それを見るんだ」
娘にくれぐれもという口調で話した。
「そんなものはいいんだ」
「お金や地位はなのね」
「そんなものずっとあるか」
「ああ、そう言われると」
「ないな」
「ええ、栄枯盛衰よね」
「お金はすぐになくなるしな」
それにというのだ。
「地位や権力もだ」
「あっという間によね」
「なくなる時はな」
「あっという間ね」
「昨日までふんぞり返っていた人が会社が潰れるか汚職で捕まってだ」
そうなってというのだ。
「一気に奈落なんてな」
「あるのね」
「こんなの世の中だと常だぞ」
それこそというのだ。
「だからな」
「地位や権力やお金はなのね」
「見るな、本当に昨日の大金持ちで立場ある人がな」
「今日は何もないのね」
「それが世の中なんだ」
「そういうのは安定しないのね」
「するものか。お父さんも見たから言えるんだ」
父は咲に強い声で話した。
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