第五十二話 夏になる前にその七
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「だからね」
「そうだけれどな」
「もうすぐ咲も十六歳だしね」
「結婚は出来るぞ」
「法律的にね」
「そうなのよね、十六になれば」
咲はまた言った。
「その時は」
「結婚は出来る」
父は言い切った。
「法律的にはな」
「そうよね、けれど」
「まだまだだな」
「考えられないわ、今はね」
咲は父に首を傾げさせ真面目な顔になって答えた。
「それよりもよ」
「真面目にだな」
「ええ、学校生活を送って」
そうしてというのだ。
「勉強して部活もアルバイトも頑張って」
「友達付き合いもしてだな」
「そうしたことをして」
「大学にもだな」
「行きたいしね、就職もしたいけれど」
「どっちにしろ就職はするな」
「ええ、兎に角それで落ち着いてから」
就職してというのだ。
「それからよ、今はとてもね」
「結婚はだな」
「もう考えもつかない先よ」
そうしたものだとだ、咲は思うことをそのまま話した。
「私にとってはね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「結婚する時はするからな」
父は娘に自分がこれまでの人生で見てきて学んだことを話した、これはまさに人生の中で学ぶことだった。
「そういうものだからな」
「そうなのね」
「だからな」
「私もなのね」
「縁があったら」
その時はというのだ。
「するからな」
「そうしたものなのね」
「だからお父さんとお母さんは結婚したのよ」
母も言ってきた。
「そうしたのよ」
「そうなのね」
「流石に高校や大学ではないと思うけれど」
それでもというのだ。
「咲も縁があったらね」
「結婚するのね」
「そうよ、ただいい人と結婚してね」
「それは絶対ね」
「本当に悪い人と結婚したらね」
その時はというのだ。
「とんでもないことになるから」
「幾らその人が好きでも」
「それでもその本質がわかったらよ」
「悪い人だってわかったら」
「気持ち醒めるわよ」
幾ら好きでもというのだ。
「実際にそんなお話もあるしね」
「そうなのね」
「何も出来ないのに大口ばかり言って」
そうしてというのだ。
「柄悪くて思いやりがなくて自分勝手で底意地悪い人なんてわかったらでしょ」
「ああ、一気に醒めるわ」
咲もそれならと答えた。
「もうね」
「そうでしょ」
「ぱっと見が良くて一見優しくても」
「それでもでしょ」
「実はそんな人ならね」
「そうでしょ」
「それでそんな人ならよね」
咲も話した。
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