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水の国の王は転生者
第七十八話 6000年前の怨念
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う感情を直接ぶつけられた事のないアンリエッタは、

『私が悪いんじゃないかしら? 死ぬほど罪深いんじゃないかしら?』

 と思いだした。

「馬鹿言わないで!」

「ルイズ……」

 ルイズが割って入りアンリエッタの肩を揺さぶった。

「でもルイズ、私が罪を一身に引き受けれて死ねば、あの人たちは許してくれるかも……」

「そんなわけ無いじゃない! いつも私の言う事聞かないのに、あんな化け物の言う事を聞くの!?」

 ルイズの的外れ(?)な一喝が飛んだ。

「そうですよ。ルイズ様の言うとおりです。彼らは同情すべき点があるのは分かりますが、モンスターとなって人を襲うようになった彼らに同情すべき事はありません」

「どうにかならないの?」

「……残念ですが」

 アニエスの非情の言葉を聞いた、アンリエッタは目を閉じた。

「そう、世の中って非情ね……」

「……姫様は優しいわね、私はそんな風に思えないわ」

「そんなんじゃないわよ……」

 アンリエッタは自分が憎まれるのが嫌だから、優しい顔をしているだけにすぎなかった。
 だが、幼いアンリエッタには、感情を上手くいなす知恵も口も回らなかった。

 スライムが三人のおしゃべりを放っておくはずも無く、スライムから放たれた触手が三人に伸びる。

「ああっ!?」

「下がって!」

 アニエスが二人の盾になろうとするが、その触手はアニエスに届くことは無かった。

『アアア!』

 通路の気温は一瞬で氷点下にまで落ち、スライムが悲鳴を上げながら見る見るうちに氷漬けになった。

「どうなったの?」

「……分かりません」

 何事かと、アニエス達は凍りついたスライムを見ると、凍ったスライムの向こう側からマクシミリアンが現れた。

「ギリギリ間に合ったようだな」

「お兄様!」

 アンリエッタは、マクシミリアンの声を聞くとヘナヘナと腰を抜かした。

「アニエス、よく二人を守りぬいた」

「……ありがとうございます!」

 アニエスは、颯爽と現れた片思いの人に赤くなった顔を見られないよう、俯いてマクシミリアンに応えた。

『エア・ハンマー!』

 誰かが唱えた『エア・ハンマー』が凍ったスライムを粉々に砕いた。

「みんな無事?」

 ルイズはその声を聞いた瞬間、ボロボロと涙がこぼれ落ちるのが分かった。

「ちいねえさま!」

 マクシミリアンとカトレアの、トリステイン国王夫妻が魔法衛士を従え現れた。



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