第二章
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「というかお醤油自体が」
「そうだよな」
「もう何でもあの辛いお醤油で」
「食えたものじゃないな」
「東京の食べものは合わないわ」
「俺もだ、二人共そうだからな」
それでというのだ。
「断わったんだ」
「そのこともあって」
「俺はソース派だ」
「私は八丁味噌派よ」
「しかし醤油はあれは駄目だ」
東京のそれはというのだ。
「ソースの使い方もなってないしな」
「八丁味噌を名古屋ローカルだっていうし」
「だからな」
「東京は駄目よね」
「ああ、二人共そうだからな」
「そうよね、私も東京の味はね」
辛い醤油を使ったそれはというのだ。
「駄目だから」
「俺が断わってよかったか」
「本当にね、けれど名古屋だったらどうだったの?」
そこの転勤ならとだ、妻は夫に野菜炒めを食べつつ尋ねた。
「その時は」
「転勤していたな」
夫はムニエルでご飯を食べながら応えた、見れば食卓にはコンソメスープもあるが二人共流石にそちらにはソースも八丁味噌も使っていない。
「まだな」
「八丁味噌はいいのね」
「お前だって大阪にいるだろ」
「おソースならいいわよ」
「そうだな、西は大体愛知県からだな」
「中部でね」
妻もそれはと答えた。
「そんな感じね」
「それで西の人間だとな」
「八丁味噌やおソースは受け入れられて」
「あの辛い味はな」
東京のそれはというのだ。
「駄目だな」
「そうなるのね」
「あんな墨汁みたいなうどんないだろ」
それはというのだ。
「本当にな」
「味噌煮込みうどんはよくても」
「ああ、お前もお好み焼きにソースはいいだろ」
「それはね」
「そういうことだな、西にいるとお互いはよくてもな」
名古屋と大阪はというのだ。
「東特に東京はな」
「駄目ってことね」
「ええ、やっぱり西が一番だ」
こう言ってだった。
夫はソースをかけたムニエルでご飯を食べた、それは実に美味く。
妻も頷いた八丁味噌をかけたムニエルでご飯を食べて美味いと思った、だが二人共お互いのものは食べず。
そして東京に行かなくてよかったと話した、あの味は駄目だと話して。そうして二人は暫く大阪に住み名古屋に転勤となったがそちらでも楽しんで暮らせた、二人共西にいられるのならそれでよかった。あの醤油の味を口にしないなら。
ソースと八丁味噌 完
2022・5・24
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