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ウルトラマンカイナ
女傑編 ウルトラバークファイト
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ぁ、早く! 不可能を可能にする力は、ウルトラマンだけの特権ではありません! 我々人類にも、その可能性があるはず! その答えに辿り着くための、6年間だったはずですッ! 違いますか、琴乃ッ!」
「……ッ!」

 琴乃が経験した6年前の死闘を知っているイヴァンナは、今が過去の雪辱を果たす時なのだと戦友を鼓舞する。「同じ悔しさ」を味わった者達の1人として、彼女は普段の物静かな佇まいからは想像もつかないほどにまで、語気を強めていた。

 イヴァンナだけではない。アメリアも、凛風も、エレーヌも、今ここには居ないオリヴィアも。彼女達は皆、ウルトラマン達の圧倒的な力に畏敬の念を抱く一方で――自分達の非力さを、ひたすら悔やみ続けて来たのだ。

 1年前、パリの上空から怪獣が飛来して来た時。当時14歳の士官候補生だったエレーヌは、初めて間近で目の当たりにした怪獣の脅威に失禁してしまい、ウルトラマンジェムが駆け付けて来るまで同期達を連れて避難することしか出来なかった。
 2年前、ブライトンの沖に怪獣が出現した時。当時14歳の艦長補佐官だったオリヴィアは、艦砲射撃が通じない怪獣に腰を抜かして失禁してしまい、ウルトラマンアークが到着するまで艦隊の後退を進言することしか出来なくなっていた。
 3年前、上海(シャンハイ)の黄浦江に怪獣が発生した時。当時16歳のエリートパイロットだった凛風は、爆撃をものともせず友軍機を次々と屠る怪獣に恐れ慄き、恥も外聞もなく失禁。ただ泣き縋るように、ウルトラマンエナジーの救援を待つしかなかった。
 4年前、モスクワ川から突如怪獣が這い出て来た時。当時19歳のエリート戦車兵だったイヴァンナは、戦車砲が一切通用しない怪獣の外皮硬度に恐れをなして失禁。ウルトラマンザインが現れるまで、撤退を余儀なくされていた。
 5年前、ハドソン川に現れた怪獣がニューヨークの市街地へと侵入した時。当時19歳のエースパイロットだったアメリアは、怪獣の圧倒的な火力によってエリートとしてのプライドを粉砕された挙句、撃墜されかけた恐怖のあまり失禁。海を越えて急行して来たウルトラアキレスが怪獣を撃破するまで、ほとんど逃げ回ることしか出来なかった。

 強く気高く、そして美しい彼女達5人には――「怪獣」という「絶対的な破壊者」により、女傑としての尊厳と誇りを徹底的に蹂躙された過去があるのだ。それでも彼女達はその悔しさと絶望をバネにして、ここまで這い上がって来たのである。
 だからこそ。より成長した彼女達はテンペラー軍団の恐ろしさを承知の上で、かつて自分達を救ってくれたウルトラマン達のために、海を越えて日本まで駆け付けていたのだ。過去に味わった屈辱と挫折すらも糧にして、受けた恩に報いるために。

 ――その「ついで」に。戦闘中での失禁という、「人生最大の恥辱」
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