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おっちょこちょいのかよちゃん
213 戻ってきて欲しい
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れるだけだろ?》
(それでも藤木君がいなくなって皆は嬉しがっているの?)
 そしてあの手紙の文章を思い出した。「僕にとって君は過去の人なんだ。もう君の前には顔を出さないので許してください。僕も君の事は忘れるよう努力するよ」という文言である。その時、二人組の女子中学生がすれ違い、その会話を耳に挟む。
「ねえ、詩織、元気出してよ。もっとマシな男子見つかるよ」
「うん、ごめん・・・。でも山中君、いくら私とちょっと喧嘩したからって後輩の女子と付き合い出すなんて・・・」
「そうよね、仲良しになれば喧嘩もあるのに」
「一緒の高校行くって約束したのに・・・」
「女子校行きましょうよ。そうすればもう会う事ないし忘れられるわよ」
「うん、そうするわ」
 二人の中学生が遠ざかっていく。
(もう会わないようにすれば忘れられる・・・。私は藤木君に忘れられて欲しいのかな・・・?)
 笹山は自問自答を続ける。
(野良犬から逃げる藤木君は私だけ連れて逃げて山田さんを置いて行った時、最初は藤木君を責めたけど、それで藤木君を傷つけたのかしら・・・?合唱コンクールの後の藤木君は何て言おうとしてたのかしら・・・?)
 合唱コンクールの後、自分が独唱のパートを皆から褒められた時、藤木は自分に話しかけた。しかし、永沢が藤木のミスを指摘した事で皆から責められる事になり、結局藤木は自分に何て言いたかったのか聞く事はなかった。
(やっぱり私は、藤木君に戻って来て欲しい・・・。卑怯な事をしたからっていなくなれば永沢くんはそうでも皆が嬉しい訳がない・・・!!)
 笹山は家に帰り、机の引き出しにしまっていたボールペンのような道具を出した。異世界から来たという女性・フローレンスによって貰った物だった。
(決めたわ・・・!!)
 笹山は道具のスイッチを押した。そしてその道具から光が出る。
「ご決断されましたみたいですね」
 フローレンスがその場に現れた。
「フローレンスさん・・・」
「で、答えは?」
「私・・・。異世界に行きます!藤木君を取り戻しに、そしてもう一度会いたいです!」
「解りました。準備ができましたらまたお呼びください。共に三保神社に行きましょう。その道具も忘れませんでくださいね」
「はい!」
 笹山は準備を始めた。そしてフローレンスをもう一度呼ぶ。
「準備できました」
「では、お連れ致します。私にお掴まりください」
 笹山はフローレンスに掴まった。フローレンスは飛び立ち、三保神社に向かった。
「御穂津姫、お願い致します」
「はい、お通り下さい」
 御穂津姫は蒼い穴を出した。
「この先に私達の住みます世界があります。行きましょう」
「はい」
 二人は穴の中へと入った。
(藤木君・・・、待っていて・・・!!)
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