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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第64話 【別視点】前線の宙(そら) その2 
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して、彼らは政府や軍上層部に『救援』を要請せざるを得ません。でなければ軍法に則り彼らは逃亡罪で銃殺されるからです。貴族の方々に対する法規はだいぶ緩いようですが、それだけに形式だけは整える必要があります。これが一つです」
「他には?」
「巡航艦と統括官達はどうやって連絡を取っていたのでしょうか。現時点でも叛乱軍の妨害は極めて強く、恐らくは中継衛星も撃破されていることでしょう。ですが巡航艦は来た。我が軍の索敵・潜伏任務を帯びた艦が、この星系に残っていること疑いありません」
「なるほど」
「そして叛乱軍の地上降下作戦は奇妙に鈍いままです。昨夜の逃走劇が小手調べと誤解されるほどに。余程彼らはこの都市を壊したくないのでしょう。つまり籠っているだけで、我々は増援を待つ時間を稼げるのではないかと」

 参謀の言葉に他の参謀達の顔色も良くなっていく。確かに物事は道理に則っている。が、いずれも希望的な観測に過ぎない……だが

「参謀。卿は土いじりができるかね?」
「は?」
「私はヴェスターラントの自作農出身でね。一応一通り小麦の作り方は知っている。卿はどうだ?」
「申し訳ございません。小官はオーディンの経理役人の子でして……」
「卿の言うことが正しいとすれば、かなりの長期にわたっての持久戦となる。補給など望むべくもないから、武器も食料も自分達で作らねばならない。この地には幸い農耕器具も畑もあるが……まずは扱えるように叛乱軍の言葉を学ばねばなるまいよ」
「は、はい」

 参謀の言の通り僅かな希望。それが伝染したのか、他の参謀達も顔色を元に戻しつつある。その中でただ一人、副官だけが私に対して不思議な視線を向けていた。それが気になったので参謀達に東西の基地にいる部隊の中央への回収と、逃走劇で空いてしまった職責の補充、動揺している全部隊への思考拘束の為の一時的な戦闘準備を指示し追い出すと、副官とこの部屋で二人っきりになってから問うた。

「何か言いたそうだったが、もう参謀達はいない。遠慮することはない。言ってみたまえ」
「閣下。レッペンシュテット閣下。もしかして統括官達が逃げ出すのを、事前にご存じだったのではないですか?」
「どうしてそう思った?」
「冗談があまりお好きではない閣下が、昨夜から今朝に限って何度か口に出しておいででした」
「卿が考えているほどに私は戦場ではまじめな男ではないよ」
「四日前に、幕僚会議が開かれておりました。その場でシェーニンゲン統括官から伺ったのではないですか?」

 その事実と私の言動だけで推論できるだけの知性が副官にはある。私は椅子に深く座りなおすと、若い副官に向き合って言った。

「そのことについて、私は卿に何ら回答するつもりはない」
「……」
「一つだけ言えるとすれば……自分の部下に死んでほし
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