第64話 【別視点】前線の宙(そら) その2
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告も入りました。着陸したのは叛乱軍の突入降下艇などではなく、我が軍の巡航艦だった模様です」
「……ワルキューレがそう判断した理由はなんだ?」
私は三〇秒ほど目を閉じた後、問い返した。
「足跡でも残っていたのか?」
「はい。我が軍の巡航艦が使用する地上固定用のアンカーと形状が一致しました」
「つまり、昨夜出て行った統括官の部隊は、そのまま味方の巡航艦に収容されて本国に逃げ帰ったと?」
「はい。ここにいる参謀全員はそう判断しております」
「つまり、我々は取り残されてバカを見たと?」
「大変申し上げにくいことながら……東西両都市に取り残された地上軍の指揮官達からは、レッペンシュテット閣下への指揮権移譲手続書が残されていたとのことです」
なるほど、どうやら子爵はそのあたり馬鹿正直にしっかりと『証拠』を残して言ってくれたわけだ。私は何となく腹の底から可笑しさを覚え、自然と笑わざるを得なかった。その笑いに、部下達の顔には困惑が広がり、さらにそれがよりおかしく思えてならない。だが鍛えた部下は私を軍医に見せるような真似はせず、笑いが収まるまで微動だにしなかった。
「では卿ら。取り残された我々がなすべきことは何かな?」
笑いで出た涙をぬぐいつつ、私は参謀の面々に問いかける。
「我々は敵中で孤立している。補給線も通信線も既に絶たれている。巡航艦四隻が来てくれたおかげで、叛乱軍の攻撃は厳しく、空間・軌道包囲はより一層厳しくなるだろう。降伏するかね?」
私の問いかけに、参謀達は応えない。彼らも分かっているのだ。捕虜になった叛乱軍将兵の取り扱いの酷さと、叛乱軍に降伏した将兵の家族に対する国家の仕打ちを。それが我が身だけでなく、家族にまで降りかかってくると考えれば、容易に降伏などとは言えない。
故に子爵たち貴族士官は容易に前線から逃亡できる。一時的な転進などという話は、たいていがそんなオチだ。帝国を支配する貴族階級。彼らに能力を売って利権にありつこうとする平民。そんな平民の一人である私は、今回たまたま売られる側になったというだけだ。
「降伏はできないと、考えます」
やはり昨夜進言した参謀の一人が、一歩前に出て言った。
「ただ望みというか、細い希望は残されていると小官は考えます」
我々に残されているのは意地だけではないか。不毛な持久戦を頭の中で構築していた私にとって、参謀の一言は意外だった。
「ほう、言ってみたまえ」
「はっ。統括官共の所業は帝国政府としても帝国軍人としても許せるものではありません。奴らの……失礼、彼らにとって我々の存在自体が弱みであります。故に彼らとしては、我々がここで全滅して死んでくれることが望みであると考えます」
「……続けたまえ」
「ですが少なくとも彼らが仮に帝国に帰投できたと
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