第64話 【別視点】前線の宙(そら) その2
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きただろうに。
「『制宙権がない場所での地上軍は蟻同然』か」
第八艦隊の参謀になった若造の一人がそう言っていたのを私は思い出した。私への嘲りを含めてのことだろうが、真実は真実だ。せめて軌道砲があれば話は違っていただろう。
〇一〇〇時。再び副官が屋上で横になっていた私を起こしに来た。
「東西のワルキューレ部隊、全て撃墜された模様です。不明の飛翔体はこの基地より三〇〇キロ南の平原に降下し、設営作業に入っている可能性が高い、とのことです。閣下、すでに司令部要員全員起床のうえ、司令室に集まっておりますが」
「わかった。叛乱軍どもは無粋な輩だな。どうせ攻めてくるなら昼間にすればよかろうに」
「……まったくです」
一呼吸おいて大尉は応えると、背筋を伸ばし、私の前に立って司令室へと導く。市街への爆撃がないおかげで私の司令室は屋上直下の層だ。副官が司令室の扉を開けると、そこには第八艦隊以来ずっと付き従ってきた私の部下達が不敵な顔を並べて、私を見ている。
「叛乱軍はようやく気概を見せてきたぞ」
私の言葉に、部下達はお互いを見やり、無言で頷き合う。
「今夜の突入は小手調べだ。東と西のワルキューレが叩き落とされたというから、大気圏内戦闘艇も発進している可能性が高い。だがたかだか四隻だ。経験上、これらに搭載できる戦力は多く見積もっても一個連隊規模でしかない」
「こちらには本土から持ってきた長距離砲があります。三〇〇キロなど指呼の距離です。そのくらいは叛乱軍でも知っているでしょう。閣下のお見立て通り、これは奴らの示威行動かと」
参謀の一人が応える。
「考えるに奴らの意図は可能な限りワルキューレを潰して制空権を掌握すること、こちら側の砲撃応戦能力を調査すること、でしょうな。夜間偵察に出て行った部隊は統括官の連れてきた部隊でしたか? 運が悪かったですな」
「仮にも味方だ。そう悪く言うものでもない。だがまずはコマンド潜入の可能性がある。夜通しで悪いが市街外周に設置したセンサー網をチェックしろ。朝が明けたら、ワルキューレを出して降下した場所を偵察。どうせ夜明け前には奴ら宇宙に逃げているだろうがな」
夜が明ければきっとそれどころではない。東西の基地に取り残された将兵が事実確認の為に、この中央都市に連絡してくるだろうから。
「副官。私はここで少し横になる。何かあったら知らせてくれ」
◆
〇八〇〇時。七時間前に集まった同じメンバーが、こんどは夜とは正反対の表情で顔を並べている。
「東と西の各部隊から、連絡がありました。統括官及び複数の軍士官が、昨夜の内に逃走したそうです」
メンバーを代表してなのか、それともババを引いたのか、副官が直立不動で私に報告する。
「今朝発進したワルキューレからの報
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