第五十二話 夏になる前にその一
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第五十二話 夏になる前に
咲が愛と別れて家に帰るとだった。
愛犬のモコの毛が短くなっていた。これまでのぬいぐるみの様な豊かなもふもふとした毛が極端に短くなり。
体型もよくわかる様になっていた、あらためて見ると足もマズルも尻尾も短い。咲はそうなったモコを見て両親に尋ねた。
「ペットサロン行ったのね」
「もうすぐ夏だからな」
父は白ワインを枝豆で楽しみながら答えた。
「だからな」
「それでなのね」
「思い切ってな」
「ペットサロンに連れて行って」
「短くしてもらったんだ」
その毛をというのだ。
「この通りな」
「そうなのね」
「犬は暑さに弱いだろ」
「ええ、寒さには強いけれどね」
「全身毛に覆われていて体温も高くてな」
そうしてというのだ。
「汗は舌からしかかけないからな」
「だから暑さには弱いのよね」
「しかもトイプードルだな」
モコの犬としての種類の話もした。
「トイプードルは元々フランスの犬だろ」
「フランスって日本より寒いわね」
「パリや宗谷岬より北にあるんだ」
緯度としてはそうなっているのだ、気候の区分では温帯となっていても日本とは寒さが全く違うのだ。
「セーヌ川だって凍るんだぞ」
「日本で言うと墨田川が凍るの?」
「そんなことないだろ」
「ええ」
それはないとだ、咲も答えた。
「想像も出来ないわ」
「お父さんもそんなこと聞いたことないからな」
「そうよね」
「しかしパリはそうなるんだ」
フランスの首都であるこの街はというのだ。
「そんなところの犬だからな」
「日本より寒いところの子だから」
「それでだ」
その為にというのだ。
「夏が近付くとな」
「毛を短くして」
「快適に過ごせる様にするんだ」
「そうよね、毎年してるわね」
「モコって毛が長い方が可愛いでしょ」
母は笑ってこう話した。
「そうでしょ」
「私そっちの方が好きよ」
咲は母にまさにという口調で答えた。
「モコっていうかトイプードルはね」
「もこもこしてぬいぐるみみたいでね」
「可愛いからね」
だからだというのだ。
「そっちの方が好きだけれど」
「けれどそれは私達の好みでね」
「モコも夏でそれは辛いわね」
「暑くてね、だからね」
それでというのだ。
「夏はね」
「毛を短くするのね」
「それお散歩も朝早くか夕方にして」
そちらの時間の話もした。
「涼しい時にするのよ」
「モコの為に」
「地面に近い分アスファルトからの熱も受けやすいしね」
「余計に暑いわね」
「足だって裸足でしょ」
「犬はね」
「それで焼けてるアルファルトも辛いから」
散歩の時に歩くその場所もというのだ。
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