第二章
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「あんたがいるから読めないでしょ」
「ニャア」
「どきなさい、全く」
「猫って新聞開いたらすぐにそうするわよ」
母の言葉はここでも佑子から見ればつれないものだった。
「むしろそうしない方がよ」
「おかしいの」
「そうよ、猫はそうした生きものだって」
その様にというのだ。
「思ってね」
「一緒にいることなの」
「そうよ、いいわね」
「全く、困った子ね」
口をへの字にさせたままだ。
佑子は言った、だがそれでもだった。
タマの態度は変わらず我儘で勝手なことばかりする、そしてだった。
家族にいつも遊びやご飯を催促してその傍にいてだった。
自分では何も出来ずご飯どころかトイレの後始末もしてもらって寝る時は家族の傍にいつもいた。両親のところにも行くが。
佑子のところにも来た、それでだった。
「昨日は朝までずっとよ」
「タマがベッドのところにいたのね」
「枕元にね、丸くなってよ」
朝食の時にテーブルの上に座っているタマを見つつ話した。
「寝ていたわ」
「そうだったのね」
「我儘だけれど甘えん坊だから」
「それが猫よ」
「そうなのね、けれどね」
母は娘にトーストを食べつつ言った。
「退屈しないし寂しくないでしょ」
「ええ、家に帰ってお母さんがパートでいなくても」
それでもとだ、佑子は答えた。
「今はタマがいつも家にいるから」
「寂しくないわね」
「それにいつも一緒にいてね」
それでというのだ。
「退屈もしないわ」
「そうでしょ、いいでしょ」
「そうね、だからね」
「猫はお家にいていいのね」
「あんたあれこれ言ってもちゃんとお世話してるじゃない」
タマのそれをというのだ。
「ご飯あげておトイレの後始末もして」
「それでなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「別に嫌いじゃないでしょ」
「それはね」
「だったらこれからもね」
「一緒になのね」
「家族としていましょう」
「わかったわ、ずっとね」
タマを見つつ話した、そしてだった。
実際にだ、佑子は中学だけでなく高校大学そして就職してだった。
結婚して家を出て子供が出来ても時々実家に戻ってタマと会った、最初は子猫だったタマも今はすっかりお婆さんになっていたが。
「只今、タマ」
「ニャア」
佑子は実家に帰るといつもタマに最初に挨拶をした、そしてタマも彼女に応えた。それはまさに家族の姿だった。
猫は困った家族 完
2022・5・21
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