第二章
[8]前話
「子供達がよくいじめていますね」
「そうみたいですね」
「左の後ろ足だけでなく身体のあちこちに石か何かをぶつけられたみたいな打撲傷があります」
「じゃあ」
「多分車の前に飛び出たのも」
「いじめられてですか」
「逃げだしたんでしょう」
怪我の痛みを堪えてというのだ。
「ですから今回は助けられても」
「野良猫のままだとですか」
「またいじめられますね」
「それでは」
恵美子は獣医に言われて考えた、そして猫は怪我が治るまでの間動物病院に入院してもらってだった。
息子達と共に家に帰って家事をしてだった。
夫の慎長身で長方形のモアイを思わせる顔と黒く短い髪を持つ彼に話すとだった。
夫はこう妻に言った。
「じゃあ退院したらうちで」
「飼うのね」
「去勢もしてもらって」
怪我を治してもらうと共にというのだ。
「その後でね」
「うちに迎えて」
「家族にしよう、野良のままだとね」
「またいじめられて怪我をするし」
「車の前に急に出て来たね」
「ええ、そうだったわ」
「交通事故の危険もあるから」
だからだというのだ。
「家族にしよう」
「そうね、それじゃあ」
恵美子も頷いた、こうしてだった。
猫は退院すると家族に迎えられた、そして。
とことこと歩いている感じなのでトコと名付けられてだった。
一家の家族になった、トコは人懐っこく大人しくだった。
とても愛嬌のある猫で息子達とすぐに仲良くなってだった。
二人にとっては三人目の息子になった、夫はそんな彼と猫じゃらしで遊びながら妻に対して話した。
「家族にしてよかったね」
「ええ、とてもいい子だしね」
「命を救えたし」
「この子も幸せそうだし」
「とてもよかったよ」
「そうよね」
「だからね、これからも」
トコの前で猫じゃらしを動かし彼に前足を出させつつ話した。
「この子とはね」
「家族でいましょう」
「そうしていこう、トコもそれでいいかな」
「ニャア」
トコは自分の父親となった彼の言葉に応えるかの様にだった。
嬉しそうに鳴いた、そうして前足を出して猫じゃらしと遊んでいた。もう野良猫でなくなった彼はとても幸せそうだった。
車に轢かれそうになって 完
2022・5・21
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