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4月の天気のいい日に、お父さんと私は腕を組むように疎水縁を散歩していた。もう、桜も満開で、人出も多かった。
「香波がこうやって、散歩に付き合ってくれるから、いい運動になるよ 今まではな ひとりだから、つい、億劫になって、歩かない日も多かった」
「そうですか 私も、お父さんと こうやって 歩くの好きです 一人だと 部屋に閉じこもっていたから」
「そうかー 香波は可愛いのう 神様がワシに授けてくださって、感謝しとるんじゃ」
「お父さん 私 プログラミングの教室に通っていいですか 勉強したい」
「そうか 良いんじゃぁ無いか 勉強することは大切だよ」
「だけど この時間が無くなるかも」
「うーん 仕方ないのー でも、少しくらい 時間空かないのか」
「うん 考えます 私も こうやって 歩きたいから」
「そうか 今日は、市役所の近くに うまい 天ぷらを食べさしてくれる所があるんじゃ そこに、付き合ってくれ」
お店はカウンター席だけで、ご主人 ひとりでやっていた。他には、誰も居なかった。
「いらっしゃい 今日は、綺麗なお嬢様とですね」
「ああ ワシの下の娘なんだ 散歩がてらな」
「社長は お綺麗な お嬢様をおふたりもお持ちなんて、今まで、知りませんでした。 お幸せですなー」
「あぁ 今が春だよ この娘にうまいの食べさせたくてな」
「わかりました おまかせください」
最初に出てきたのは、若竹のてんぷら
「淡竹です 少し、早いんですが 手に入ったもんでね 糸島の塩と真鍋島で取れた海藻を練ったものでどうぞ」
懐かしい。瀬戸内の海藻。私の秘密基地の磯の香りがしたのだ。その後、氷魚と新芽、烏賊すり身と三色素麺、太刀魚とか私が初めて食べるものばっかり出してくれた。
「お父さん おいしかった ありがとう 島の香りもしたの」
「香波 島には 帰ることは無いのか?」
「私 お父さんとお母さん それに、おばぁちゃんの お墓が・・」
「そうか 元気にやっていると 報告に行かんとな― ワシも一度、香波が生まれたのは、どんなところなのか一度見ておきたいものだ」
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