第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その3
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下命した
敬礼を返すと、強化装備姿の彼は大尉に尋ねた
「同志大尉は出撃されぬのですか」
ハンニバル大尉は、金色の顎髭を撫でながら応じた
「奴さん達、低空飛行しているから俺達が気づいてないと思っている。
だから、夜会の出し物として対空砲火の演奏の一つでも聞かせたいと思ってな」
ハンニバル大尉は、戦闘機パイロットではなく、空軍地対空ミサイル部隊の出身
対空戦闘は、彼の十八番であった
「思う存分、暴れてこい。奴等は航空優勢の一つも取ろうとはしてない。
自分達のばら撒いたミサイルの威力を知る良い機会であろう」
中高度対応三連ミサイルランチャー、2K12 クープ(NATOコード:SA-6 ゲインフル)
低高度対応地対空ミサイル、9K31 ストレラ-1(NATOコード:SA-9 ガスキン)
自走式高射機関砲、ZSU-23-4 《シルカ》(NATOコード:ゼウス)……
ソ連製の機動防空システムが配備されていたことを、KGB特殊部隊は甘く見ていた
ゼオライマー奪取やマサキ暗殺に血道を上げていた彼等にとって対空装備など認識外……
BETA戦での航空優勢の低下は、対空防御への関心を低下させた
軍事部門の殆どを戦術機に優先としたこの世界にあって、それが常識となっていた
軍の再編成が不十分で、遅かった東ドイツ軍にとって、この事は幸いした
冷戦下の対空火器が温存されたことによって、戦術機部隊に対しての即応が可能となったのだ
「回せ!」
戦術機部隊に緊急発進の準備が整えられた
強化装備を身に纏った屈強な男達が、勢いよく操縦席に滑り込む
操縦席に座ったユルゲンは、深く息を吸い込む
直後、通信が入る
「怪我だけはするなよ……。僕は奥様が哭く姿なんか見たくないからね」
士官学校で席次を競った同輩がそう諭す
「分かっている」
彼は頷いた
「分かってるなら良い」
「有難な」
同輩は彼の返事に驚いた様子であった
何時もであれば、喰ってかかってくる白皙の美丈夫
「ユルゲン、君は色んな筋から標的にされている。
ソ連留学の時もそうだったけど、KGBにも目を付けられているだろう……。
『他人の不幸は蜜の味』、と喜ぶ悪辣な連中だ。
部隊長の不首尾などは想像したくもない……」
放たれた同輩の言葉
長きに渡ってロシア国内で暮らした、ボルガ系ドイツ人の血を引く男の哀愁を感じさせる
3世紀近くロシアの為に尽くしたドイツ系住民に対して、ボリシェビキは追放や粛清を持って応じた
ヤウクの心の中にある、ソ連への深い憎悪……
画面越し
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