第二章
[8]前話
「潰れたな」
「そうでしたね」
「問題は調教の内容で」
「そんなことしたらです」
「問題になって当然です」
「それでその中にな」
マカーシーさんはさらに言いました。
「ケニーもいたんだ」
「えっ、いたとは」
「どういうことですか!?」
「ケニーがいたなんて」
「今のケニーじゃなくてな」
そうではなくというのです。
「仏教の考えだが前世だな」
「ケニーの前世ですか」
「生まれ変わりですか」
「仏教っていいますと」
「そうだ、それで前世でな」
その時にというのだ。
「あいつはその虐待を受けてな」
「そういえばあのサーカス団にはそんな話もありましたね」
「子供の象も調教してショーに出して」
「子供の象は身体壊して」
「それで死んだんでしたね」
「三歳、象は五十年も七十年も生きるからな」
マカーシーさんは象の寿命のこともお話に出しました。
「三歳っていうとな」
「ほんの子供ですね」
「人間で言っても三歳ってそれ位です」
「本当に子供です」
「赤ちゃんからものごころついた位ですね」
「そんな子供が母親から引き離されてな」
まだ甘えたい年頃なのにというのです。
「一ヶ月以上足を縛られて立たされてな」
「心壊されて」
「調教されてですね」
「鉤爪で引っ掻かれて」
「ショーをしていない間は檻に入れられて」
「それでショーは一日に何度もで」
「酷使されてな」
そうしてというのです。
「身体壊して死んだんだ」
「三歳っていったら身体もできていないのに」
「本当に赤ちゃん位なのに」
「そんな目に遭って」
「そうして」
「死んだんだ、お母さんに甘えることも出来ないで」
そうしてというのです。
「前世じゃな、けれど生まれ変わって」
「マカーシーさんがまたケニーと名前をつけて」
「それでここで、ですね」
「前世じゃ出来なかったことをしてるんですね」
「お母さんに甘えてるんですね」
「幸せに暮らすこともな」
前世で出来なかったことの中にこのこともあるというのです。
「しているんだ、だったらな」
「ええ、俺達も幸せにしましょう」
「前世のケニーが味わえなかったものを堪能してもらいましょう」
「そうしましょう」
他の飼育員の人達もマカーシーさんの言葉に頷きました、そうしてです。
マカーシーさん達はお母さんと幸せな時間を過ごしているケニーをとても可愛がって大事にしました、そうして彼を幸せにしてあげるのでした。
赤ちゃん象の名前 完
2022・5・19
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