第二十二話 身体が丈夫ならその四
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「そうでしょ」
「有り難いことね」
「それは本当によね」
「何よりよ」
こう言うのだった。
「健康ふぇね、不健康が悪いとは思わないけれど」
「やっぱり健康だと」
「それだけでね」
「いいことなのね」
「そう思うわ」
妹に試合を観つつ話した。
「それに越したことはないわ」
「怪我も病気もなくて」
「身体が万全だったらね」
それならというのだ。
「幸せの原点よ」
「健康って大事ってことね」
「ええ、しかしね」
「しかし?」
「エイハブ船長になると」
「あの白鯨の」
「あの人は復讐鬼だから」
モビーディッグに片足を食われてからそうなったのだ。
「心が問題よね」
「あの人はそうね、片足で大変でも」
実加もそれはと頷いた。
「それは問題じゃなくて」
「もう復讐しか考えてないことがね」
「問題よね」
「結局最後負けるけれどね」
「それでモビーディッグ船に体当たりするのよね」
「主人公達の乗っている船にね」
これが白鯨の結末だ、そして主人公イシュメール以外は皆死んでしまうという悲惨な結末となるのだ。
「そうなるのよ」
「何か報われないわね」
「病んでた人が幸せになれるかっていうと」
その心がだ。
「もうね」
「ないってことね」
「映画の中には復讐しないで帰って」
そうしてというのだ。
「ハッピーエンドになる作品あるらしいけれどね」
「そっちの方がいいわね」
「そうよね、私もそう思うわ」
理虹もそれはと応えた。
「というかよく片足だけで済んだわね」
「モビーディッグと戦ってね」
「それで助かったわね」
「それだけでも運がいいわよね」
「あの鯨絶対に普通の鯨じゃないから」
只のマッコウクジラではないというのだ。
「読んでたら二十メートルじゃないわね」
「マッコウクジラってそれ位の大きさよね」
「尋常じゃない大きさだから」
「ただ白いだけじゃなくて」
「そんな怪物と戦うとか」
「自然と戦う差なものよね」
「人間が大自然に向かってもね」
それこそというのだ。
「負けるわよ」
「そうなるのがヲチをね」
「実際勝てなかったしね」
「だから全滅エンドよね」
「あの船長さん復讐ばかりでね」
捕鯨の仕事をしつつも頭の中にはそれしかなかった、その執念もまた白鯨のストーリーの柱であるのだ。
「病んでるからね」
「それじゃあ幸せじゃないわね」
「何か楽しむ感じにでしょ」
「全くないわね」
妹もそれはと答えた。
「読んでも」
「そうよね、だからね」
それでというのだ。
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