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少女は 見えない糸だけをたよりに
第三部
3-1
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かを煮始めたようだった。

「椎茸 お雑煮用のね こっちは鯛の子よ そうそう お風呂は主人が帰って来るまで、待ってね あの人が先だから・・」

「いいですよ あのー 何か お手伝いできることございますか?」

「ううん いいの 明日はいろいろ お手伝いお願いすると思うわ そろそろ、あの人が帰って来るから、一緒にね」と、玄関に向かった。

 そーしたら、お父さんが帰ってきたみたいで、ふたりで格子戸を開けて、門扉まで、お母さんが急いでいた。

「お帰りなさいませ」と、お母さんが・・私も、お母さんにあわせて、あわてて、頭だけ下げていた。

「うむー おぉ 来てくれていたのか」と、どんどん家の中に入って行った。やっぱり、着物姿のお父様。

 私は、付いて行くわけにもいかないと思ったので、ひとり、ぽつんと台所に居た。いいのかなー 椎茸のほうは まだ グツグツいっているのだけど・・ぼーっと 見ていた。

 その時、お母さんが戻ってきて

「あっ 椎茸 まだ いいんですか?」

「ええ もう少しね お汁がなくなるまでね」と、鍋を振っていた。そして、小鍋にお湯を沸かして、徳利にお酒を注いでいた。お湯が沸騰したら、火を止めて、その中に徳利を

「こうやっておくとね あの人がお風呂から出て来た時に、丁度いいのよ あとは、しじみの炊いたもの 香波ちゃん 冷蔵庫に菊の絵の青い陶器の蓋つきが入ってるから出してもらえるかしら」と、お母さんは、小皿にお漬物を用意していた。そして、私が出した陶器から小鉢にそれも入れていた。

 そして、用意したものを持って、お母さんと一緒に、奥の座敷に・・

「えーと こっち来て 座んなさい 少し、相手してくれないか」と、お父様は自分の左角を指さしていた。お母さんの向いの席。

「先日は申し訳ないことを言ってしまった。あの後、燿から、さんざん叱られたわー
 すまんが もう一度名前 教えてくれんか」

「藤原香波と申します かおる 香りに海の波って書きます」

「そうか きれいな名前だ で 幾つ?」

「15です 1月に16になります」

「えっ 15? 中学生?」

「いえ 中学は卒業しています この秋に高校を中退しました」

「そうか それで 独りで京都まで来たのか― 燿から身寄りが居ないって聞いたが・・」

「ええ おばぁちゃんと ふたりで暮らしていたんですけど この秋に亡くなってしまって・・それで」

「そうかー それは お気の毒なことだったな あー 聡《サト》 先に風呂に行ってこい ワシはもう少し、香波さんに相手してもらうから 燿が帰ってきたら、香波さんは一緒に入ればいいやなー」と、私を見て来たので、うなづいた。

「そう じゃぁ そうさせてもらおうかしら
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