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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
四人で紡ぐ物語◆レッドギルド
第二十六話 失ったこと、気づいたこと
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のかな。」

マルバは言葉を切った。何も言わないシリカの頭を、先程人を殺した左手でなでる。
「……なんでかな。僕は後悔していない。それだけじゃない。罪悪感を感じないんだ。人を殺したっていうのに、その手で君に触ることができるし、それがおかしいとは感じない。……ははは、どこかおかしくなっちゃったのかな、ずっとこんな殺し合いの世界にいたせいで。」

シリカが突然マルバに抱きついてきた。顔をマルバの胸に押し付けて、その存在を全身で感じようとしているかのようだ。驚いたマルバも抱きついたシリカもしばらく無言だったが、やがてシリカがその態勢のままゆっくりと話し始めた。
「……わたしも、です。マルバさんが死んじゃう、って思ったとき、あの人を殺すことに戸惑いはありませんでした。マルバさんがいなくなるなんてわたしには耐えられない。……わたし、マルバさんを守れて本当に嬉しかった。マルバさんを助けられた自分が誇らしく思います。罪悪感なんてこれっぽっちも感じてない。わたしも、この世界に来て大切な感情を失くしちゃったのかもしれませんね。」

でも、とそこで言葉を切ると、マルバに抱きついたまま顔だけマルバに向けた。
「でも……わたしはこの世界で失った感情よりもっと大事なことを知りました。……マルバさんがこの世界に生きているということです。わたしはあなたに出会えて本当によかった。この世界に来てよかったと思います。たとえこのままこの世界で死ぬことになったとしても、わたしはきっと茅場さんを恨んだりしないと思います。あれだけたくさんの人が死ぬ原因になった茅場さんに……わたしは感謝しているんです。彼がいたから、あなたに出会えた。
……わたしは、マルバさんが好きなんです。」

そこまで言ってから、シリカは頭をマルバの肩に預けた。
「……なんでかな。わたしはマルバさんのことをなにも知らないのに、なんでマルバさんが好きなんて言えるのかな。現実で会ったことのない人なのに。ゲームで、アバターを通してやりとりしているだけなのに……なんでマルバさんのことが好きなんて言えるんだろう。何も分からないのに……なんでマルバさんが好きだってことだけは分かるのかな……!」

耐えられなくなったようにマルバもシリカをきつく抱き返した。
「……さっき死にそうになった時、これで死んでもいいって思ったんだ。僕は君を守れた。君が生きていることが僕の生きた証だ。君が生きる限り、僕は君の中にずっと生き続けることができる。それでもいいって思った。……でもさ、すぐに『僕はまだ死ねない』って気持ちに変わったんだ。それは君がいたからだよ。君が僕を弱くしたんだ。君と一緒にいたい。ずっと、ずっと一緒にいたい。君のぬくもりが欲しい。これからも、君の側で君をずっと守っていきたい。
……大好きだよ、シリカ。」
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