■■SAO編 主人公:マルバ■■
四人で紡ぐ物語◆レッドギルド
第二十六話 失ったこと、気づいたこと
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「アイリア!!止まるな、こっちまで死ぬぞ!!」
二人の方を見やると、アイリアがこちらを振り向いた姿勢で呆然としていた。アイリアが相手にしていた二人が、動きを止めたアイリアに襲いかかる。マルバはチャクラムを放ち、敵の動きを牽制した。横一列に並んだ敵は『円月斬』の格好の的である。三人のうち攻撃モーションに入っていた二人が切り飛ばされ、なんとか躱した一人が硬直中のマルバに向かって『シングルシュート』の構えをとった。
あ、まずいな。これはまずい。
いくら攻撃力の低い『シングルシュート』とはいえ、普通に死ぬよね。僕のHP、もうレッドだもん。
僕、ここで死ぬのか。結局何もできなかったな。……いや、そういえばシリカは僕が助けたから生きていられる、僕が生きた意味はあったんだって言ってくれた。
……そっか。こんな僕だけどシリカを守れたんだ。それなら、死ぬのは怖いけど……僕は“生きた意味”を手に入れられた。それなら、もう惜しむものはない。死んでもいい。
……死ぬ?僕が?
……こんな状態で心置きなく死ねる?
…………嫌だ!!
嫌だ嫌だ嫌だ!!死にたくない!!まだ僕はやり残したことがたくさんあるんだ!!シリカと……そうだ、シリカとの約束はどうした、現実で葵を紹介するっていう約束はどうした!!それにそれに……いや、そんなことはどうでもいい!僕はシリカに伝えなきゃいけないことがあるんだ!!君が僕にかけてくれた言葉が、どんなに僕を救ってくれたのかということを!君と一緒にいてどんなに楽しかったかということを!君と出会えてどんなに良かったかということを!僕が君に抱く、この気持ちを!!シリカ、僕は君のことが……!!
全てのものがスローモーションに見える。叫ぶミズキが見える。固まったままのアイリアが見える。硬直しているマルバには何もできないうちに、男の手からゆっくりと放たれる短剣は……その手から離れないうちに、青く揺らぎ、その持ち主ごと細かい砂のようなポリゴンの欠片と変わり、宙に散った。
ゆっくりと視界を横に振ると、『シングルシュート』の発動後の態勢のまま、いつも通りの真剣な瞳で、宙に拡散する男を睨みつける……シリカがいた。
その後の記憶はない。ただ、気づいたら宿屋にいた。肩に重さを感じる。何気なくそちらを見ると、マルバに寄りかかるような態勢のシリカがいた。
シリカがぽつりと言葉を漏らした。
「人を……殺しちゃったんですよね。わたしたち。」
「そうだね……。僕たちはこの世界を甘く見ていたのかもね。剣を握った時に、人を殺すことになるかもしれないなんて考えなかったもんね。……僕たちは人を殺す覚悟を持たずに人を殺す道具を手に入れたんだ。いつかこうなるかもしれないなんて考えもしなかった。……覚悟が、足りなかった
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