第四話
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らば、共に連れて行ったと。……生まれなければ良かったのだと」
「何を言うか。儂はの、お前が生まれてきた時のことを一度も忘れたことはないぞ?
小さなお前が直子に抱かれての、あどけなく笑う姿は今でも覚えておる。お前が生まれて来て、本当に幸せだった。
ずっと側にいてやれなんだことはすまなんだが、小十郎……お前は生まれて来て良かったのだ。お前は儂の自慢の息子、そのように言うてはならぬ。
誰がお前にそのような言葉を投げかけたとしても、儂はお前の生まれを祝福するぞ。
……お前は生まれて来て良かったのだ。お前が生きているからこそ、この父も心安らかにあれるのだ」
見てたんじゃないのか、って思うような輝宗様の言葉に何だか泣きたくなってきてしまった。
小十郎は当然記憶がないけど、確かに父は幸せそうだった。私と小十郎を抱いて嬉しそうに笑ってたことを覚えてる。
忘れられないよ、現実の世界じゃ父さんも母さんも……そんな顔してくれたことは一度も無かったんだから。
「お前が眠るまで側におる。ゆっくり休め。……案ずることはない、姿は見えずともお前の側におるゆえな……」
優しく髪を撫でる輝宗様の手が離れても、小十郎がその手を掴むことは無かった。
眠ってしまったんだな、そんな風に思ったところで輝宗様が袖で小十郎の顔を拭っている。
泣いてたんだ、あの子は。そりゃそうだろう、私だって自分のことじゃないけど泣きたくなったもん。
あんなこと言われたら泣いちゃうよ。ただでさえ、人から良い扱いを受けてこなかったんだから。
「輝宗様、ありがとうございます。小十郎に最高の贈り物が出来たと思います」
「いや……小十郎の父のことを思えば、あれくらいは言うてやらんとな。
己が生まれたことに自信を持てぬなど、親としては……悲しいことだからの」
ちょっとおかしいところがあるけど、やっぱり輝宗様はいい人だよ。
もう一生ついていきますって言いたくなっちゃうくらいに。
出来ることならば、ずっと元気にいてもらいたいけど……この世界ではどうなのかな。
「小夜」
ここでは呼ばれたことのないその名前を呼ばれて、私は驚いて輝宗様を見る。
今度は私の頭に手を乗せて、まるで自分の子供の頭を撫でるように私の頭を撫でてきた。
それに涙が滲むけれど私は必死に堪えていた。
「お前も生まれて来て良かったのだぞ。誰が何を言おうと、この父がお前が生まれたことを祝福する」
本当に優しく笑ってそんなことを言うもんだから、泣くつもりは無かったのに涙を零してしまった。
だってさ、輝宗様ったら父上みたいな顔をして笑うんだもん。泣きたくなるよ。
あの父上は本当に私達のことを愛してくれた。母上もおっかない人だったけど愛してくれたし……
それ
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