第63話 【別視点】前線の宙(そら) その1
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閥貴族の彼なりに善意と羞恥心はあるのだろう。だからと言って、私や残された部下が救われるわけでもない。
「巡航艦四隻か。ささやかなものだ」
私は彼らと同じように会議室を出ると、屋上まで出て空を見上げる。青い空だ。故郷のヴェスターラントもそうだった。ここは叛乱軍の都市故にオフィスビルと集合住宅だらけだが、少し郊外に出れば故郷と同じような広大な小麦畑が広がる。そして見たこともないような巨大な農業マシンがあり、同盟語さえ読めればすぐにでも家族を連れて農作業に勤しみたくなる。子供頃はあれ程嫌だった農作業も、今になると強烈に恋しい。
しばらく会ってはいないが同い年の妻も、一六歳の息子と一〇歳の娘は元気だろうか。息子は私と同じ軍人になりたいと言っていたが、止めておけと今なら言える。イゼルローンがある限り、故郷がこの地のように戦火に焼かれることもないだろう。それがどれだけ幸せなことか。息子に会う機会があればクドクドといてやりたいが、そうやらそれは叶いそうにもない。
私はこの地にきてから再び始めた紫煙を、大きく青い空へと吐き出した。
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