第63話 【別視点】前線の宙(そら) その1
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あるというのは、私にとっても意外なことではあるが。が、同時に私は呆れざるを得なかった。イゼルローンが攻撃されている状況下では、救援戦力としては全く意味のない『たった』一〇〇〇隻であっても、エル=ファシル星系に送り込んでくる理由が想像できる故に。
「一〇〇〇隻なら陽動には事足りますな」
そしてその理由を口に出してしまうのが、ハイデンブルク子爵指揮下のボンガルト大佐だ。帝国騎士でまともに士官学校も出ている。私としては同僚になるが、上官となる若い貴族達へのゴマすりは些か鼻につく男だ。目先は効くので、そういう判断もできるのだろう。
「その通りだ。大佐。ここにいる全員だけの話とするが、貴族位、爵位を持つ士官と関係者をそれぞれリストにしてあげておいてほしい、ハイデンブルク子爵」
「……わかった」
「突入してくるのは四隻の巡航艦となる。乗り切れるのはせいぜい二〇〇〇人前後だろう」
「三等分でよろしいですな?」
「勿論だ、ミュルハイム男爵。各都市七〇〇人までとする。決行日は帝国標準時間四日後の五月一一日午前三時。夜陰に紛れ各都市にあるシャトルで、この中央都市南方四〇〇キロ先に広がる平原に集合せよ」
「「承知した」」
二人の統括官と二人の地上戦部隊指揮官はそれぞれ敬礼して会議室から出ていく。結局ミュルハイム男爵の地上戦指揮官であるバウラー大佐は口を開くことはなかった。彼も帝国騎士だから、恐らく脱出するのだろう。彼らの足音が完全に消えた後で、シェーニンゲン子爵はつまらなさそうな視線を私に向けた。
「聞いていたように、我々はこの地から一時離れる。我々が救援戦力をもって引き返してくるまで、卿にはこの占領地の維持を命じる」
つまりは捨石だ。一〇〇〇隻という時点で予想はしていたが、ここまで露骨に言われると怒りを通り越して呆れてしまう。
「故郷にある卿の家族に不自由はさせぬ。それはシェーニンゲン子爵の名において約束しよう」
「過分なご配慮、感謝申し上げます。ですがお願いしたいことが一つございます」
「なんだ?」
「他の都市に残ることになる地上戦部隊の指揮系統についてです。ボンガルト、バウラー両大佐から指揮権を譲られておりません。正式な文章を残していただけるよう、閣下より両統括官殿に依頼をしていただきたく存じます」
「なぜ先程の席でそれを進言しなかった?」
「部下の指揮権を他者に譲るというのを、第三者の目前で行わざるを得ないというのは軍人として降伏に等しい恥辱です」
「なるほどな。卿なりに気を利かせたというわけか、よかろう。そちらは手配する。卿はシャトルの準備を万全にせよ」
疑念が張れたのか、子爵はフンと強く鼻息を飛ばし足音高く会議室を出ていく。それは意気軒昂な逃走以外のなにものでもない。私の家族に言及する程度は、門
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