第63話 【別視点】前線の宙(そら) その1
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、一〇分の一以下の僅かな兵力で逃走を図った挙句に手酷く失敗し、ひどく落ち込んでいた表情をしていた。実際に部隊を指揮した参謀長がいうには本来抵抗するだけでも無駄なこと、戦争ではなく狩猟のようなものだと嘯いていた。
状況が地上戦になれば、私の仕事だ。敵の艦隊は既に逃散しているが、念のために入念な地上索敵を行い、僅かばかりの防衛衛星と郊外にある軌道砲基地を吹き飛ばして強襲降下を行った。ワルキューレにも協力してもらい、都市上空から索敵したところ生体反応はなく、地上戦力で調べてもそれは同じであった。
住民は事前に避難していたのであろう都市の無血占領。しかも地上生活が可能な有人惑星を。同じ最前線でも極寒のカプチェランカとは比べ物にならない。フェルトハイム中将らは自分の功績に有頂天だ。ここが最前線基地となれば、イゼルローンに匹敵する司令部が創設され、叛乱勢力の制圧の大いなる助力となる。私ですらそう思った。
だがその喜びは二週間もせずして崩壊した。
非難した住民は事前避難などしておらず、敵の指揮官を囮としてまんまと逃げおおせていた。レーダーで探知されていた大規模な隕石群こそ避難船団であったことがフェザーンを通じて本国に知らされると、宇宙空間戦闘指揮の不始末を取らされ、参謀長は更迭された。
次に第八艦隊自体に撤退が命じられた。表向きは司令官の栄転と休養と再編成だが、これもまた事実上の更迭だ。ダゴンでの敗戦、それに横紙破りな功績泥棒が問題視され、寄り親であるブラウンシュバイク候も軍部との関係を悪化させたくないと考え、数週間もめた末に統帥本部への栄転という形で伯爵の更迭に同意した。その際、エル=ファシルに残された動産の大半が陸戦部隊以外の将兵によって略奪されている。
最後に居住可能なエル=ファシル星系を誰が管理するかで問題が発生した。しばらくは軍の管理ということになるだろうが、誰の『所領』になるかだ。最前線で危険も大きいが貴重な居住可能星系だ。イゼルローンからも遠いので防衛任務は困難をきたすが、後々星系の所有権を主張したい門閥貴族が自派の兵を送り込むよう圧力をかけた。そして三つの都市があることから、宇宙艦隊と中央都市は軍の統括部隊が、他の二つが外戚となったブラウンシュバイク・リッテンハイム両派から送り込まれることになった。最悪に近い時間の無駄遣いだ。
結果として私の部隊は中央都市の統括官の指揮下に入ることになる。だが最初の統括官はそれなりに仕事ができる男であった。が、直ぐにイゼルローンに戻され、次に送られてきたのはリッテンハイム候派の艦隊指揮官と、ブラウンシュバイク公派の統括官だった。
彼らはここが最前線だと理解していたか疑わしい。艦隊は哨戒任務をしないし、地上部隊は自分の指揮下を除けば僅かな略奪品探しと意味のない破
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ