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竜のもうひとつの瞳
第九話
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りますが、なんて続けたら引っ叩いてやるところだったけど、小十郎は空気を読んだのかそれは言わなかった。

 「何でさぁ、自分が鬼だ、なんて言ったのよ」

 あんなことを言えば、また迫害される対象になる。下手をすれば村に出向けば石だってぶつけられるようにもなるだろう。
噂が広まって、竜の右目は災いを齎す鬼だった、なんて言われるようにもなるかもしれない。
政宗様の評価にも……まぁ、これはいいや。

 「……間違ったことは言っておりません。小十郎は鬼です。人の皮を被った鬼ですから」

 何処か拗ねた表情でそんなことを言う小十郎は、左手をぐっと握り締めている。

 馬鹿だね、この子は。いくつになっても、そういう不器用なところが改善されないんだから。
いや、歳を重ねるごとに不器用さに磨きが掛かってるかな?

 「じゃ、私も人の皮を被った鬼だね」

 「姉上は」

 「違わないでしょ。だってさぁ、婆娑羅の力だって大体は炎や雷、風、氷、あと光と闇でしょ?
なのに私に宿ったのは重力の力。まぁ、風に近いっちゃ近いけど、異質なものだもん。
それに双子だし、鬼だって言われるには十分よねー」

 そう、異質なんだ。神様が転生前にチート並に強くしてあげる、なんて言ってたけど、それで私にくれた力が重力だもん。
結構応用が利くからお陰でオールマイティに使いこなしてはいるけど、この世界じゃ異質な力だから、
婆娑羅者としては異端として見られている。左利きで双子の弟である小十郎と同じようにね。

 「……この小十郎の中には、鬼がおります。
人の血に狂い、真剣勝負に命を懸け、その瞬間に喜びを見出す飢えた獣のような鬼が。
皆の言うような天災こそ起こしませぬが、これは災いを齎すものです。……鬼と呼ばれて蔑まれるには十分過ぎる程の」

 しっかりと小十郎を抱きしめて、髪を撫でてやる。
私よりもずっと大きい小十郎を抱きしめるのは結構大変なんだけど、
それでもこの馬鹿を抱きしめてやらないわけにはいかなかった。

 小十郎は人よりも狂気が濃く、いつも正気の近くにある。
それは他人が見ていても良く分かるもので、戦場であの子が単体で出ると伊達の兵達は寄り付こうとしない。
むしろ勝手に近づくな、という命令を出してるくらいだから困っちゃうものでさ。
草木一本残らない、なんて言われてるけど、それがマジだからフォローの仕様が無い。

 でも、人間ってのはどんなに狂気を抱えていても、そればっかりにはなれないのよね。
そんな狂気の裏側で、人の死を悲しむ優しい心があることを私は知ってる。

 「馬鹿過ぎて言葉にならないわ。人間ってのは誰でも腹の中に鬼を飼ってるのよ。
たった今、見てきたでしょう? あの村人の腹の中にも鬼がいた。
鬼がいたか
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